2013年3月20日水曜日

若冲が来てくれましたープライスコレクション江戸絵画の美と生命

いや、若冲に会いに行きました・・・・仙台まで。

先日、コレクターのプライスさんの生ボイスを聞きに丸ビルまで出かけたわけですが、http://pikarosewine.blogspot.jp/2013/03/90-12-3-lacma-http-en.html
勿論、話で終わらせるつもりもなく、二時間半強で行くことのできる仙台市博物館から東北を巡回し始めているプライスコレクションに会いに行ったというわけです。



この間のトークを聞いたときには《動植綵絵》シリーズの一部でも見られるのかと、早合点してしまっていたのですが、残念ながら、それはなし。(去年DCに行けば見られたのですね。。。残念。。)
2006年の「プライスコレクションー若冲と江戸絵画」と8割がたは同じ絵画が展示されていました。
でも・・・同じ絵でも見せ方や切り口を変えると、おんなじものを見た!・・・で終わらないのが展覧会の面白さ。
前回はプライスさん言われるところの自然光の環境で見ることはできないまでも、コンピューター制御で太陽光から月明かりへと移り変わる照明を備えた特別展示室まで設けて、昔ー江戸時代での鑑賞状況に近づけるという工夫が、非常に印象的だったわけですね。
章立ても
Ⅰ 正統派絵画
Ⅱ 京の画家
Ⅲ エキセントリック
Ⅳ 江戸の画家
Ⅴ 江戸琳派
という分け方。

コレに対し、今回は前回より10点ほど少ないけれど、前回にない20点を加え、更に「国内賛助出品作品」と言って、国内の美術館から特別に出品されている作品もあるので、結果的には前回よりもトータルでは多いのかな?
・・とはいえ、会期中を4つのピリオドに分けての展示なので、見ることのできない作品もあります。(4回通ウノハ難シイケド、岩手ト福島ニモ廻るからなぁ。。。ブツブツ)

数はともかく、今回は図録によると、復興を担う未来のオトナ=子供達にこそ、見てほしい(スミマセンオトナモ楽シマサセテモライマス)、との意図もあり、章立てにしろ、絵のタイトルの見せ方にも工夫があります。図録も見返し部分には東北の子供達の写真が。
1 ようこそプライスワールドへ
  (1)目がものをいう
  (2)数がものをいう
  (3)○と△
2 はる・なつ・あき・ふゆ
3 プライス動物園
4 美人大好き
5 お話きかせて
6 若冲の広場
7 生命のパラダイス

ま、ちょっとタイトルなどがひらがな先行なので、頭の硬くなってしまった私には、どうも普通の展覧会と違って、ついていくのがちと辛い部分もありましたが、子供にもわかりやすいような解説もあり、すっかり忘れていた作品の良さを満喫できる良い展覧会でしたねぇ。

祝日といいながらも、東京のように激混み環境でもなく、しかも「若冲に会いに来た」仙台近郊の方々ばかりで、鑑賞の雰囲気もよく、常設を含め午後13:30過ぎからなんと閉館間際の16:45ギリギリまで居たことにビックリするほどでした。

さて、その中で、今回改めていいなぁーと思った作品たち。(結構沢山あるなぁ)

まずは若冲以外の絵師たち

<のし歩くシャモ>・・・・正式名は≪軍鶏図≫ 芦雪 ・・解説によると地の紙が貼りあわせてあるところから。下絵か試作で書かれたというんだけど、試作だろうが、下絵だろうが、真剣勝負で描かれている感じ・・・というか実に不敵な表情を浮かべていて、その表情がいい。これから戦いに挑む感じなのかなーと思わせられていい絵です。


<岩から下をのぞくサル>・・・・正式名≪岩上猿猴図≫ 渡辺南岳 ・・恐る恐る崖の下を覗く表情と、その崖の下を想像させる空白が素晴らしい。

この猿以外にも森狙先という人の二作品がこれまた良いのですよ。
<ハチを見上げるサル>     ≪猿図≫ これはプライス夫妻が火事の際一点だけ持って逃げるとしたら、コレ!と指定している作品。どうして好きなのか、どのようなシーンと読み取るかについても含め図録に詳しく書いてあります。蜂をほう、猿は猴(こう)とも書き、音でいうと封候(ほうこう)に繋がるので、出世につながる縁起の良い組み合わせだということは絵の脇の解説に書いてありましたけど、そのことはプライスさんが好きな理由ではないようですね。

<梅の木であそぶサルの親子> ≪梅花猿猴図≫ 親子でぶら下がるには細い梅の枝につかまって、片手でひょいと虫を捕まえている姿がなんともいいデス。



動物の章もあるくらいで、どの動物も生き生きしている(たとえトラがネコみたいな顔でもね。)のですが、印象的なのは
<野をかけまわるウマたち> ≪野馬図屏風≫ 蕭白
蕭白のぐちゃぐちゃ(スミマセン)これでもか、と線を重ねた、ともすると画面の煩い作品は、その技巧については認めるものの、あまり好きになれないことがあるのだけど、濃墨で勢いよい筆致で大胆に描かれた作品はとっても好き・・・な私にはぐっとくる作品。これは、前回の東博では出ていなかった作品ですね。
珍しく?金箔地に大胆な筆致でささっと描かれたような感じなのですけど、馬の動きが映像のように感じられます。やっぱり蕭白は巧いんだなーと改めて思ってしまいます。


おそらく今回の展示の中で一二を争うくらい好きなのは、
<雪の夜の白いウサギと黒いカラス>   ≪雪中松に兎・梅に鴉図屏風≫ 葛蛇玉
この六曲一双の屏風はちょっと奥まったところに、これだけが展示されていたのですが、たまたま後ろからやってきた若い女性が「見てると寒いねー」と言うのが聞こえました。なるほど、確かに漆黒の地(夜)に白い雪がわんさか降っている感じが良く伝わってくるし、確かに「寒さ」まで絵から感じられる。何故兎が木に登っているかの問いには答えられないけど、漆黒の闇と白い雪、そして白い兎と黒いカラスの対比がとても面白く、空気の冷たさまでが感じられるいい屏風です。

そして、今展覧会で3点ある(うち、今回は二点)「描表装」の真骨頂のような鈴木守一(其一のムスコさんなんですね)の <秋の草花> 《秋草図》
左が前回の図録で、右が今回、
今回の方が子供向きにはなってますが。。。

前回も出ていたのに、全然記憶になかったのは迂闊でした。
実に洒脱で、しかも丁寧に描かれた風帯や一文字(この中に金泥で軍鶴が描かれてるんですね)。風袋の間をひらひら飛ぶ黒アゲハは少々大きいのではないかと思う一点だけが気になるけれど、萩の上でモンシロチョウを待ち構えているカマキリ・・・周りを取り囲む天地の地まで飛び出した草花・・秋海棠・露草・紫苑の配色、たらしこみで描かれた葉など、正統江戸琳派の美しさを堪能できる作品で、大変気に入りました。

ま、このほか挙げていたらキリがないのだけど、鈴木其一で言うと≪青桐・紅楓図≫の雨の表現や≪群鶴図屏風≫・・・どうしても右隻の第二扇の鶴は餌の虫を銜えているようにしか見えない。。けど単なるゴミなのか?は気になって仕方ありません。
是真の漆絵の≪鷹と猿図≫も、山種で、波頭の絵をみたばかりだったので、すぐにそれとわかり、なんだか嬉しかったし、鷹の爪に捉まれた猿の表情も面白いです。

そして若冲からは・・・
<ニワトリの親子>  ≪親鶏と雛図≫  筆の勢いがよくて好き
<波打つ岩のワシ> ≪鷲図≫       迫力満点
<日の出を告げるオンドリ> ≪旭日雄鶏図≫ カラフル且つ構図が好き
<オンドリとバショウの葉> ≪芭蕉雄鶏図≫ 後の方に弟子が同じように筋目描きで芭蕉の葉を描いているけれど、圧倒的にいいですね、こっち。
<雪のつもったアシとオシドリ> ≪雪芦鴛鴦図≫  雪のつもった感じや、水中に顔を見せる鴛鴦の表現が好きですね。。
<よりそうツル> ≪群鶴図≫ これは他にもあるように金泥を使わずして裏箔で金に見せているんだろうなぁ。
<ツルさまざま> ≪鶴図屏風≫ 卵のような形を墨でしゅっしゅって描いただけ・・・みたいなかるーい軽快なタッチ。。。なのに、与える印象は深いですね。

あれー?ポスターになっている
<アジサイの花と二羽のニワトリ> ≪紫陽花双鶴図≫ や
<足をなめるトラ>  ≪虎図≫
を除いても、気になった作品がこんなにあっちゃぁ、時間がかかるのもむべからぬですね。

そして最後に、もちろん
悦子夫人が、これだけでも東北の人たちにお見せしたいと思われたという
<花も木も動物もみんな生きている>  ≪鳥獣花木図屏風≫
凄く近い距離で、しかもガラスケースなしで見ることのできた作品でした。確か東博の時はこの作品はケース入りしていた記憶が。。(他の作品でケースなしがあったかと。。)

この間のトークでも話題になった12ミリ四方のマス目が8万六千個ある・・・ことは確認しませんでしたが、縁取りがペルシャじゅうたんの柄・・・という確認はできちゃいました。展示されていたんです。

そして、図録には載っていなかったのだけど、この屏風の中にいる動物達の数も半端ナイ。

最初一生懸命メモしていたら、係りの人がこのパネルなら写真とってもいいといってくれてホっ。
でも右隻は書いたから記憶に残るけど、左隻は書き留めていないんで、写真だけだとあやふやになりそうですね。

図録の対談にも書いてありましたが、本当のプライスさんはコレクターでありながら、それを自分のものだけにせず、どうぞどうぞ、と見せてくれるgenerocityの塊のような方だということですが、そのおかげで、東北の子供達でもない私たちも、素晴らしい作品群に再び再会することができたわけで、本当に感謝です。

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