2016年1月11日月曜日

青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会「【特別展】伊藤若冲 生誕300年記念 ゆかいな若冲・めでたい大観 ―HAPPYな日本美術―」(@山種美術館)をリアルタイムでレポートしよう!に行ってきましたー


2016年に開館50周年を迎える山種美術館では、新春にふさわしく、幸福への願いが込められためでたい主題や、思わず笑みがこぼれる楽しいモティーフを集めた展覧会を開催いたします。
 日本美術において、祭事・婚礼などの慶事や節句、あるいは日常の営みの中で用いる図様として、さまざな吉祥画題が表現されてきました。本展では、その中から長寿や子宝、富や繁栄などを象徴する美術に焦点をあて、おなじみの鶴亀、松竹梅、七福神など現代人からみてもラッキーアイテムとなる対象を描いた絵画をご紹介します。さらに、ユーモラスな表現、幸福感のある情景など、HAPPYな気持ちをもたらす作品も展示します。
 本展でまず注目すべきは、初公開作品を含む伊藤若冲の墨画です。おどけた様子の七福神《布袋図》*や《恵比寿図》*、表情豊かに動物の姿を描いた《河豚と蛙の相撲図》*、押絵貼屏風《群鶏図》*など、大胆なデフォルメと機知に富んだ表現をお楽しみください。また、歌川国芳のユーモアあふれる猫や金魚の戯画(会期中、展示替え有り)、鮮烈な色彩と滑稽さが魅力の吉祥画・柴田是真《円窓鐘馗》、重厚感のある筆力が際立つ河鍋暁斎《五月幟図》*など幕末・明治時代の作品も見逃せません。そして、日本を象徴する霊峰富士の堂々たる姿を描いた横山大観《心神》、陰影や立体感を意識し、近代的な人物表現を取り入れた下村観山《寿老》など、伝統的な画題を土台としながらも、時代に即した新しい表現を試みた近代の画家たちの優品も見どころです。江戸時代から近代・現代まで、「HAPPY」を切り口に日本美術をたどる、縁起のよさ満載の展覧会です。
※ 「*」印は個人蔵、その他は山種美術館蔵
【山種美術館HPより】

新年おめでとうございます。いやいや、山種美術館さん開館50周年おめでとうございます。

昨年サントリーの「若冲と蕪村」にあまりにも多く通いすぎたのでいくら好きとはいえ、若沖 若干飽きたかも。と思いつつ、前売り券はしっかり買っておいたわけですが、中村さんのつぶやきで、青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会「【特別展】伊藤若冲 生誕300年記念 ゆかいな若冲・めでたい大観 ―HAPPYな日本美術―」(@山種美術館)をリアルタイムでレポートしよう![2016111(月・祝)17:3019:30]が開催されることに気づき、久しく行けてなかったけど今回は時間調整すればなんとか行けるぞ!ってことでめでたく申し込みができました。
よって、館内で撮影した写真の画像を貼りますが、許可を得て撮影しているものでございます。あまり、晒されていない当ブログでも写真の検索がかかっていることが多いのですが、決して無断転用、複写などなさらぬようお願いいたしますね、ペコリ。(写真作品の所蔵は★印=山種美術館所蔵作品、印のないものは個人等山種美術館所蔵作品ではありません。)

さて、若冲若干飽きたかも、と書いたのは訂正します。うん、今回は11点展示のうち山種さん所蔵のものは一点のみ、残り10点はしかも主に個人所蔵の作品をお借りしてきているということで、5点は初公開(初公開マークまでついている♪)、滅多なことでは目にすることができないものばかり、いやいやありがとうございます。山崎館長、山種美術館の皆さま。

伊藤若冲《河豚と蛙の相撲図》
上部の賛の内容に注目
入って一番に目にする作品≪河豚と蛙の相撲図≫なんざ、一見、見た目は鳥獣戯画の江戸時代版のような軽妙さ、まさにこの展覧会のタイトル「ゆかいな若冲」に通じ、第二章のHAPPYになる絵画です。しかも、同じ主題を数多く手掛けている若冲でありながら、この河豚と蛙の組み合わせでの相撲図はこれ一点しか現存していない由で、その意味でも貴重。HAPPYになれますよね。このレアな作品は広島県美と府中で公開されたことがあるらしいけれど、私はお初。そのレアものに対面できて、よかった。。。
伊藤若冲《河豚と蛙の相撲図》
部分 )

館長によれば、(壁の解説にも書いてありますが)、賛を読むと、「いつになったら諍いがやむのだろうか」とあり、実はこれ、きなくさい話が背景にあっての絵ではないかと言うのです。河豚にしても蛙(蟾蜍)にしても毒を持ち、悪意の或る者同士の争いと読み解けると。背景は天明の大火に端を発したことではないかと、館長はさらっとおっしゃっていました。確か、大火の後に錦市場を閉鎖に追い込もうとする陰謀があって、これに青物問屋の隠居居士若冲が再開に向け奔走したという時期はそれと認められる作品がほとんどないという話がありましたから、この絵が描かれたのがその頃なのかその後かはわからないけど、そういう背景を知れば知るほど別の意味で楽しくはなりますね。
ってか、やはり、一番いい場所に鎮座ましますだけあって、やはり目をひくし、よく見れば相撲の手をとっているのは蛙だけで、河豚はどさーっと、身をゆだねてるだけじゃね?的にも見えるわけですが、一見したときは相撲とってるようにみえちゃうわけで、そんな感じが好ましい。

さて、いつも観始める時、皆さんはどう回りますかねー。この河豚と蛙のある壁をずーっといくのがふつうかな?
展示の章立ても第一章 愛でたい、めでたい、Happyな日本美術の小項目「長寿のシンボルー鶴と亀」の始まりが、次に出てくる、同じく若冲の《亀図》からです。
伊藤若冲《亀図》 (部分 )しっぽはミモザに似ている?

これは画仙紙という柔らかい紙に若冲ファンにはどちらかというとおなじみな筋目描きで甲羅を丁寧に描いてある作品ですが、今回のイベントのナビゲーターであるお馴染みTakさん曰く、この季節の花(ちょっと早いか?)ミモザに似てるというのですよ、尾っぽが!何?
で、確かに、確認してみると、ふむふむ、まぁ、そういわれればそう見えますよね。
これだからいろんな方の感想文読むと面白い発見があったりして、同じ絵でも、見る人によってツボが違ったりする楽しさですね。まさにHappyになれる瞬間です。

次は奇才河鍋暁斎の《浦島太郎に鶴と亀》。童話で出てくるイメージや今のCMの登場人物とは違いかなり薹のたった中国の漁師って感じが、アレですが、亀に白髪ならぬ亀髪?(苦笑)三千丈という感じで毛がなびいていたり、まぁおめでたい絵ですねってことで、次に行きますかね。
河鍋暁斎《浦島太郎に鶴と亀》
長らく3幅のどこに太郎を置くか等、ポジションが
定まらなかったけど、これで落ち着きつつあるそうです
次からは、大観、玉堂、龍子、古径の四者四様の鶴が並びます。
ま、大観は主題としての鶴ではなく背景の鶴で群れで飛ぶさまこの絵、見れば見るほどしみじみと良い絵です。
龍子の《鶴鼎図》は鼎という文字に鶴の足が似ているからという説明がありました。なるほど。大変美しい絵ですが、著作権の年限なのかな、いつも龍子の写真は撮れないんですよねー。
玉堂の《松上双鶴》は文字通り松の上に二羽が向き合ってますが、よく考えると、鶴が二羽乗っているなんて、ずいぶんと立派な幹ですよね。なーんて下らん事を思ってしまったり。。(苦笑)
川合玉堂《松上双鶴》★
卵の形のような古径の鶴は、以前の内覧会で感想も書いたし、http://pikarosewine.blogspot.jp/2013/12/130.html
手ぬぐいも持ってるから今回は割愛、どんどん次に行きましょう。
横山大観《寿》★

小項目的には次は「縁起物のマルチプレーヤー 松竹梅」うん、まさに。お馴染みの大観の裏箔で描かれた《竹》屏風のほのかな光は勿論、《寿》という文字の背景に描かれた松・竹・梅が金泥よりは金に近く光っていて、おめでたさを強調していますね。

このセクションに若冲の《群鶏図》があるけれど、まぁ。これはいいわね。一応「生き物に込められた吉祥」というカテゴリではあるものの、ちょっとフィットしないかも。でも、このダイナミックな筆さばきを拝見できることが吉祥か。
伊藤若冲《群鶴図》

さらに「幸運をもたらす神ー七福神」までは現代人にもそれとわかる吉祥のシンボル。
ここでは特に若冲のお初にお目見えする《布袋図》やら《大黒図》《恵比寿図》が解説されてました。ついつい見入ってしまう。(初物に弱い日本人。笑)
若冲はあまり人物画は上手くないと思う私ですが、こうやって鶏とかわらぬ一筆書き調なものは勢いもあって、かわいらしい感じもあり、まぁ良いかな。
伊藤若冲《大黒図》(左)《恵比寿図》(右)表装が一緒
伊藤若冲《布袋図》

それに比して、ばっちり細密画風なのが狩野常信と一信の《七福神図》。常信の七福神はどなたも優しい笑顔でほのぼのします。
狩野常信《七福神図》★ 部分 )
会期中場面替えあり
狩野常信《七福神図》★部分 )みんなハッピー
一方の一信はあの震災の年に江戸東京博物館でやっていた五百羅漢を描いた人…大きさはそんな巨大じゃないけど、なかなか味があります。お隣にも一幅《布袋唐子図》があって、頭上に大きな袋のような頭巾をかぶった、もとい、頭巾のような袋をかぶった布袋さまとふくよかな唐子が印象的です。

狩野一信《布袋唐子図》 部分 )
五百羅漢図で羅漢たちが見せていた
表情はここにはないですね

新井洞巌《蓬莱仙境図》★
創設者である山崎種二初代館長と同郷だった洞巌
が種二の長女の結婚祝で贈った作品と作品解説
に書いてありました。
山鳥の鳴き声が響き渡りそうな険しい山道を超える
と良い事があるのかな?等と妄想してしまいます。
次の壁面ガラスケースは「聖なる山ー蓬莱山と富士山」という小項目。

蓬莱山と言われても今の私たちにはどんだけ思い起こすことのできる吉祥の山かはわからないけれど、絵を拝見することでイメージするっていう感じかなー。

⇒この絵のように仙人が住む不老不死の仙境となれば、やはりいい事ありそうですね、そこに至る道のりの厳しさと、到達した暁に出逢える美しい光景・・・妄想が広がります。


それに引き換え富士山は誰もが知っているだけに、いろいろな表現に目を奪われる感じ。写真が撮れなかったけど、伊東深水の富士はペルシャンブルーのような深水の絵によく出てくる美しいブルーが印象的なばかりか、手前側に松の幹と緑の葉をつける枝が広がり、非常に大胆な構図。その隣には小松均の《赤富士図》(これも一点撮りはダメ)があるので、このエリアは強い印象でしたね。

次は「くらしに息づく吉祥」
田崎早雲《瑞夢(富士・鷹・茄子)》★
中村芳中《万歳図》部分 )
お正月といえば初夢ですよね?(ww) 
一富士二鷹三茄子を描いた《瑞夢》とか、芳中の楽し気な《万歳図》、などが並び、五月の節句には魔除けのシンボル鍾馗様を飾る風習が今でもあるけど、暁斎、是真、新井洞巌の三者三様の鍾馗様が登場するエリアは楽しい。
柴田是真《円窓鐘馗 ★さすがの構図と描表装
特に是真の《円窓鐘馗》は丸い窓の中から今にも飛び出しそうな目で鍾馗様がねめつけていて、その窓から逃げ出そうとする間抜けな鬼という構図、描表装と山崎館長はおっしゃっていたけど、ふつうの描表装とは違って窓の外側は真っ赤に塗りこめられているという感じで、構図といい、さすがは洒脱な蒔絵の漆工芸品を遺した是真らしく、とても印象的。


印象的と言えば、「生きものにこめられた吉祥」の是真の《墨林筆哥》、二年前の「Kawaii日本美術」の時にも出品されていたと思うけど、何度見ても思わず微笑んでしまう、愉快な、そして「かわいい」漆絵です。

柴田是真《墨林筆哥》★
いつみてもかわいらしく、くすっとしてしまいます。


その隣にはこれまた良くできてるわねー、と顔がゆるむ国芳の《両面相 だるま・げどふ、伊久・とくざかり》(注意:2月7日までです、後期展示替え対象)。



これらは冒頭の《河豚と蛙の相撲図》と共に第二章のHappyになる絵画のうち「笑い・ユーモア」カテゴリーに属しますね。


もうひとつ、このカテゴリの中には、《墨林筆哥》同様 かわいい対象として取り上げられていた《伏見人形図》★があります。伏見人形の質感よろしくざらざらっとした感触を見てもわかるように描いてあるというのが特色だそうで、長い軸だからなのかな、これは15秒間動画OKの対象だったんですが、なんか動画にして意味があるように撮れてません。。ゴメンナサイ。

伊藤若冲《海老図》部分 )
ショップには同じ顔と色をした小さな伏見人形も売ってました、前回気づかなかったかも。それこそ「かわいい」!

さて章立ては前後しますが、第一章にはこの他「生き物にこめられた吉祥」「新春を寿ぐー愛されキャラクター・干支の動物」という小項目も。

上述通り、《群鶏図》にしても雅邦の《平安長春図》にしてもその項目にフィットするのか?と言われると、その裏にある意味等を解説されでもしないとちょっとうーん、、、かも。。と思ったりもするのですが、いずれも佳作。

竹内栖鳳《鯛》部分 )
さっと描いた感じで詳密ではないのにリアルですよね
中でも栖鳳の《鯛(1月)》はこのブログの私のアイコンに
も使わせて戴いている程好きな絵柄。
同じ鯛でも児玉希望の《鯛》は毒々しいくらいの赤さと背景(テーブル?)のブルー、金色っぽい皿の上に背景の上にも散らされた赤っぽい文様と怖い顔をした左向きの鯛(金目?)が目に留まる大きな作品でちょっと恐ろしい。(一点撮り不可、展示光景写真のみOKだったのでこんな↓感じです。)
児玉希望《鯛》★、伊藤若冲《海老図》の掛かる壁面光景

とはいえ、題材は鯛なので・・・・・
さすがに鯛とか海老はお正月の御膳に登場することもあり「吉祥」感はむんむんですね。

今回の内覧会、企図された訳ではないのかもしれないけれど、たまさか、この美術館の設計に係った方(日本設計の山下さん)と照明をご担当のスタジオレガロの尾崎さんが参加されておられました。

中村さんの振りで、そのお二人のお話も伺うことができました。

照明が仕込まれている部分の周りに
白いパネル上の天井が張ってあるので、
結果サイズの違う短冊が切ってある
ように見えますね
この空調の温度調整ボタン
と思しき白い突起はどうして
も外すことができなかった?
正解が知りたいなぁ。。
クリアで反射を極力おさえた展示ケースを使われている事は今まで何度かお話を伺ってきていますが、白い(アイボリーが入ってる?)天井を見上げると黒い部分に照明が仕込まれていることがわかります。このデザインは建物の外壁と呼応するようにできてるそうですよ。
そして、日本画専門の美術館ということで余計なものが目立たないよう、突起物がないように、ちゃんと意図して設計されているとの事。
山下さんはひとつだけ、どうしてもそれが叶わなかったものがある、それがなんだかわかりますか?という謎の質問を発せられたのですが、この日少し早く帰ってしまったので、答え合わせできなかったのですが、コレでしょうか?
さて、その白黒短冊状の天井(視覚効果として広く感じますよね)からの照明が作品にあたるように工夫されている事は分かりやすいといえばわかりやすいですが、作品に集中して見られるように、展示ケースを見る際には照明器具そのものが見えないようにして、且つ眩しすぎないように、上からは二段、下からも照明をあててあるんです、と説明を受けました。
      展示ケースの上部からの照明、
      見る側の目線にはこの照明は全く見えません。
      感じさせないようにとの配慮
照明を「明かりをとる」という観点から「感じさせないようにする」との工夫、普通とは180度違う見方に、なるほどー、と思いました。

お二人ともありがとうございました。
やはり、こういう美術館に来たら、展示だけではなく、建物等も含めてみてね、という見どころ等、美術ファンの心をくすぐる「コネタ」をうまーく振ってこられる中村さん、さすが「美術のカリスマ・ブロガー」でおられます。


小林古径《松竹梅》★
右上が《心神》がモチーフとなった
「雲海」、右下は古径《松竹梅》が
モチーフの「吉祥」(緑の)
最後はいつも内覧会の際には投票も行われる作品に因んだ和菓子。ラインナップはこんな感じだったのですが、今回残念ながら、配布解禁になる前に失礼されて頂いてしまったので、味わうことはできませんでしたが(作成秘話もあったのかな?)、ルックス的には「吉祥」が分かりやすくてよかったですが、元になった作品に近づけようとして苦労されたかな?と思ったのは「雲海」、食べたら大観の《心神》の境地になれたかな?と興味がわきました。

横山大観《心神》★ 作品紹介の札の横の解説にも注目くださいね
第二室は干支にちなんだ猿の絵が並びます。写真撮れないの多かったので、割愛しますが、まだ書ききれないこと一杯。やはり、ここはもう一度美術館に行って目で確認だな。

いつもながら山崎館長を始め美術館の皆様、中村さん、こういう機会を作ってくださりありがとうございました。

《特別展】伊藤若冲 生誕300年記念

ゆかいな若冲・めでたい大観―HAPPYな日本美術―

2016年1月3日(日) ~ 2016年3月6日(日) 10:00-17:00 (入館は16:30まで)
休館日月曜日 ≪2月9日から一部作品展示替えがあります》