2014年11月28日金曜日

やっぱり、運慶、快慶って凄いなぁー。高野山開創1200年記念ーーー高野山の名宝展

 

高野山は、弘法大師空海により弘仁7年(816)に真言密教の根本道場の地として開かれました。日本仏教の聖地の一つとして、時代と宗派を超えた信仰を集めてきました。
本展は、高野山開創1200年の記念として、山の正倉院とも例えられるその至宝の数々を公開するものです。
特に仏師運慶作の国宝《八大童子像》が全躯そろって展示されるのは、関東では10年ぶりとなる貴重な機会。
空海の精神と壮大な歴史に育まれた日本文化の精髄を是非御堪能ください。
サントリー美術館ニュースより

会員登録更新したから、すぐに行こうと思ってるうちに、前期の国宝《澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃》を見逃してしまったら、もう、どうでもいいかな、なーんて思っちゃっていたんですが、そうではありませんでした。
今回私にとって、良かったのは、密教の曼荼羅とか、理解が難しいものではなく、シンプルに彫像が多かったってことかもしれないし、それが、運慶・快慶という稀代の仏師の作品がどーんどーんとあったからなのかもしれないけれど。

全体の印象はさておき、最初に出てくる横向き(東向)の空海の像がこれまたグッとくるんだわ。優美で柔和な空海のまなざしに触れると自然に敬虔な気持ちになれる感じ。
 
解説もシンプルで金剛杵(こんごうしょ)や金剛鈴(こんごうりん)の解説を読んで振り返るとそこにそれぞれ独鈷杵(とっこしょ) や、三鈷杵、五鈷杵が展示され、しっかり頭のなかに違いがはっきり覚えられる感じ?それと解説の字かおおきいからかな?(笑)

いずれにせよ、そこで、もう一度最初の空海の像《弘法大師像》は、五鈷杵を右手に、左手に赤い数珠を巻いておられる、と言うことを確認出来ました。

さて、頭でっかちな《大日如来坐像》も印象的ではありますが、一目で運慶か快慶のような凄腕の仏師の作品だな!と目に入ったのは、やはり、快慶作と近年確認されたという《執金剛神立像(しゅこんごうしんりゅうぞう)》。


通常端整な作風からすると異形であると解説にはあったけど、素晴らしくダイナミックな姿は惚れ惚れするほどの動きや力強さを感じるわけで、それが快慶でなくっても並外れた実力の仏師であることには変わりないですね。
更に快慶作の《四天王立像》が続いて並んでいるのは圧巻です。解説では特に、広目天が出色の出来だそうですが、素人目には、どれも体躯のバランスが素晴らしく、美しく、力強い。そして、実に保存状態が良い!
感動を覚えます。
階下に降りていくと、豊臣秀吉が奉納したというでっかくて忿怒の相が迫力満点な《無畏十力吼菩薩像》を背景に、端正なお顔立ちとカラフルな孔雀羽の光背を擁し、大きな孔雀に座す《孔雀明王坐像》も待ち構えています。もうどんどんドーンとキタ――(゚∀゚)――!!って感じ。

そしてそのまま、運慶作の《八大童子像》が八躯待ち構えているんですね。
ハ躯の中では、ポスターにも使われている《制多伽童子像》がその赤い皮膚の色と特徴的な髪型で目を引くけれど、《烏俱婆誐童子像》の燃え上がる炎の髪型も捨て難い魅力。運慶作かどうかは確定してない《阿辱達童子像》の乗り物になっている麒麟のような動物も気に入りました。

サントリー美術館は12月7日までですが、あべのハルカスで来年一月からも見られます。

高野山開創1200年記念
高野山の名宝
2014年10月11日~12月7日
サントリー美術館

2015年1月23日~3月8日
あべのハルカス美術館
b

2014年10月5日日曜日

思いが強すぎたかな......... レアンドロ・エルリッヒ Fragment of Illusion 展 @ 代官山アートフロントギャラリー

この度アートフロントギャラリーでは、当ギャラリーのリニューアル特別企画展示として、レアンドロ・エルリッヒの個展を開催いたします。

《雲》シリーズが並ぶギャラリーを外から眺める
 レアンドロ・エルリッヒは2000年のホイットニー・ビエンナーレでデビュー後、2001年、2005年のヴェネチア・ビエンナーレで国際的な注目を集めた作家です。日本においては2004年、金沢21世紀美術館の開館以来、常設作品《スイミング・プール》で広く知られています。他には2006年の越後妻有アートトリエンナーレでの作品《妻有の家》や、2010年の瀬戸内国際芸術祭で女木島の民家を舞台に発表された作品《不在の存在》、2012年に開館した越後妻有里山現代美術館[ナーレ]に常設展示されている作品《トンネル》といったプロジェクト・ベースの作品を多数発表しています。また2013年の東京都現代美術館での「うさぎスマッシュ展-世界に触れる方法(デザイン)」出品など、美術館においても活躍目覚ましい作家です。
 今夏、金沢21世紀美術館での個展でも好評を博し、国際的にも旬の作家であるレアンドロ・エルリッヒの魅力は、何よりも世代を超えて誰もが作品の空間で遊べる親しみやすさにあるといえます。こうした身体、空間を使ったプロジェクト・ベースの作品に対して、今回ギャラリーの個展では、作品の魅力をよりコンパクトに凝縮したパーソナルなスタイルでお見せできないかと作家ともども検討を重ねてきました。レアンドロの作品をこれまでとは異なる視点で楽しめる新作をsご紹介しますので、ぜひこの機会にレアンドロ・エルリッヒの作品の新たな魅力を楽しんでいただければ幸いです。




Fragment of Illusionレアンドロ・エルリッヒはアートの領域を拡張し続けている。この作家の手にかかれば私達が日常的に見慣れたものが見たことの無い体験をする装置にくるりと反転するのだ。例えば金沢にあるプールの作品では水面を覗いてみると水の中に観客がいる。越後妻有の美術館の作品は、外観は倉庫であるが、中は車の走るトンネルである。いずれも日常のありふれた物から本来の機能を取り外し、別の要素を付け加え、見る人の驚きを引き出すことでアートとして成立させる。軽妙洒脱であって世代を問わず楽しめるというところが特徴的である。

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世紀にヨーロッパの国々が民主主義に移行してゆく過程で美術館を通してアートも市民の目の届くところに開放されていった。ところが、美術の中身がそれによって変わったわけではない。アカデミーは存続し、それに否を唱える前衛芸術は各々の論理にのっとった新たなジャンルの中で囲い込まれた世界を形作っていく。その世界観を共有できない観衆は取り残されてしまう。美的なものを追い求める崇高な行為であったり、なにか小難しいものだと思ったり、教養の様なものをアートだと思う人は多いのではないだろうか。もちろんアート全体の概念としてこうした理解は全く間違っているわけではない。しかし、美術を拠り所として生きる私達は、ごく限られた観衆の為に美術を存続させているのが精一杯に思われることもあって愕然とすることもあるのだ。
レアンドロ・エルリッヒの作品はどうか。この作家の作品の面白さは美術館の中に美術と一般的には呼ばれないような「プール」や「窓」や「倉庫」が唐突に置かれている違和感から始まる。ここまではかつての前衛芸術と同じなのだが、物を提示するだけでアートのシステムの変革を目指す前衛芸術とは一線を画している。むしろ違和感を肩すかしするようにして、それを驚きに変化させることに力点が置かれる。見る側の美学や知識の有無にかかわらず、日常的な思い込みを視覚的に覆すことを前提として製作されているからこそ誰もが面白く思える作品を生み出すことができるのだろうその意味で囲い込まれた狭い美術の領域から歩みだすために美術が今後目指さなければならない新たな地平を体現する作家であると言えよう。観客の反応を考慮するという点でもレアンドロ・エルリッヒは非常に現代的である。この作家の会話の中にしばし登場する「フォトジェニック」という言葉がある。「写真映りの良い」という意味である。誰もが携帯という形でカメラを持ち歩くこの時代にスナップで撮りたくなる、あるいは撮れた作品がウェブでどう面白く作品が伝わるかという、現代ならでは観客の反応をこれほどしっかり押さえ、柔軟に対応しようとする作家を私は知らない。 これまでレアンドロ・エルリッヒの作品としては金沢や越後妻有など比較的大きな体験型の作品が知られている。アートフロントギャラリーにおける展覧会では新作も含め、これまでとは全く別の視点で作られた小さな作品を展示する。そこにもアートの領域を軽々とまたぐ、この作家の凝縮されたアイデアを見ていただけるであろう。 アートフロントギャラリー 近藤俊郎


 

ギャラリーのHPより
 
 
最初に出会ったのは21世紀美術館のプール。これは有名な作品だから、コメントするまでもないけれど、次に面白かったのはセトゲーの時に期間限定で公開されていた《不在の存在》のシュールさが気に入ってしまったわけですね。あのざくっ、ざくっといった音と白い石がすこしづつ沈んで足跡だけが進む。透明人間の姿までは想像できないけど、まさに不在の筈のナニカが蠢く不思議。
そんな印象を残してくれただけに、ちょいと覗いてみたかった。
あ、実はその前にBunkamuraでやっていた「進化するだまし絵II」で2009年作の《ログキャビン》を見たけど、まぁ、それほどキター!感はなかったんですけどね。よくできた作品とは思ったけど。で、今回。ギャラリーのオーナーが書かれている通り、これまでとは全く別の視点でつくられた小さな作品群なわけで、おおきな仕掛けを期待するところではなかった。
でも、《雲》のシリーズ、期待にこたえてくれたかな。アクリル板が重なっている中に、同じような形をした雲なんだけど、ひとつひとつは実際の雲をそのアクリルに閉じ込めたようになっていて、それぞれのタイトルが違って、御値段も違う。。桁数見てびーーくら。。だけど。なかなかこれは楽しい作品ですね。

もう一部屋のほうは、真ん中で景色の違う立体がくるくる回る作品、とアパートのようなところにいろいろな人がいるような作品。立体は《ログキャビン》と同じ感覚かな。二つのシーズン(秋と冬)、鏡で仕切られているので、外の世界も映り込む。。
ちょっと面白かったのは《階段》 三段の階段の頂上に登ると非常口の中にエッシャーばりの永遠に続くような階段をながめられる。
 
ギャラリー展示だからこんなもんかな。
 



 
 

 

レアンドロ・エルリッヒ展ーFragmens of Illusion
 
程  2014年 95日(金)- 105(日)
会場  アートフロントギャラリー(代官山)
 

 

 

2014年9月15日月曜日

惹きつけられてしまった・・・・五木田智央 TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS @DIC川村記念美術館

この日は、今シーズン最終日になる変化朝顔を見にレキハクの暮らしの植物苑に行って、ロスコーみて帰ろうということで、この企画展があること自体すっかり見落としていたんですよね。
というか、ゴメンナサイ、五木田さんって全く知らなかった。

でも、川村に着いた時に、若い人が大勢いらしていたのですよ。今考えると、この企画展狙いだったのかな。。。そして、私たちが、変化朝顔を見ている間に日曜美術館のアートシーンで取り上げられていたんですね。近い方なら、思い立ってすぐに来れるし。
いつもの週末よりは心なしか人の入りが多かったような・・・・・

それは、当然でした。彼の事を知っていたり、アートシーンで画像を見た人なら、来たくなるわ。。

それくらい、惹きつけられました。

最初に、2014年の新作を見た瞬間から、シンプルな白黒だけなのに、シュールな絵柄の数々。でも、決してアブストラクトにとどまらない・

《New Sad》



《私のマネキン》



《用心棒》
特に、この《用心棒》、なーんか、手長猿だか、ナマケモノだかのようにしか見えなくて。。。。よく見るとちっちゃい目もついてるけど、なんだか用心棒とは程遠く見える愛らしいだらりんぶり。。

ま。そーんな空想の世界まで広げさせてくれちゃうわけで。
モダンな作家であるけど、とてもキレイな感じで、抽象だけじゃない。不思議な引きがある筆さばき。

見ていく順番はどのようにする、とは書いてなかったのだけど、なぜか最新作から、だんだん過去に遡るように見ていった結果・・・


コラージュのような小さな額を組み合わせたような作品《無題》は、どこかで誰かの似たような作品を見たこがあるような既視感があるんだけど、


ビリケンさんのようなこれはいいなぁ・・
《退屈な新婚旅行》


うん、やはり、進化するたびに、私の好みになっているー。。

一緒に行った人もとても気に入ったと言ってましたが、一緒に出てきた親子は、「ナンダカわけわからない、もう一度来る必要ない」と言ってました。

でも私はまた来たいなー。

是非佐倉に行かれた際はお立ち寄りを!

写真は美術館の指導に基づいて撮影しております。




五木田智央
TOMOO GOKITA THE GRAT CIRCUS
2014年8月31日(日)ー12月24日(水)
DIC川村記念美術館

2014年8月3日日曜日

楽し~い♪ イメージメーカー展@21_21デザイン サイト

いやー期待以上に面白かった❗


デザイン「あ」展以来かしら?

行こうと、思った動機が不純だったのですよ、ミナ☆コレのスタンプラリーがこの地域来ると纏めてGETできるからね。あ、もちろんGrace Jonesのインパクト強いお顔のポスターがなかったら、そこまで頑張らなかったかな?とも思うけど。


あ、あと事前勉強なしで飛び込んだわけですが、ミュージアムによれば
 
 21_21 DESIGN SIGHTでは、日仏文化交流に精通したキュレーターのエレーヌ・ケルマシュターを展覧会ディレクターに迎え、企画展「イメージメーカー展」を開催します。イメージとファンタジーの世界をつくりだすこと、多岐にわたるクリエイティブな分野を融合させること、そして今ここにある世界について語りながら、人々をそことは全く違った場所へ連れだすこと......本展では、国内外で活躍する「イメージメーカー」たちによる、幻想的で斬新な仕事を紹介します。希代の「イメージメーカー」として知られるジャン=ポール・グードは、1970年代から広告イメージのクリエーター、イラストレーター、デザイナー、そしてハイブリッドな作品や夢のつくり手として、世界を描き直し、変貌させ、魔法にかけ続けてきました。彼がつくる洗練された力強いイメージはアイコン化され、その比類のない美しさは世界中を駆け巡り、多くのクリエーターに影響を与えてきました。展覧会にはグードと同じ「イメージメーカー」のスピリットを持つ、三宅純、ロバート・ウィルソン、 デヴィッド・リンチ、舘鼻則孝、フォトグラファーハルが参加します。写真、ドローイング、ビデオインスタレーション、動く彫刻など、モードや演劇、デザインや映画につながる彼らの作品とその創造のプロセスは、人々に多角的な視点を与えます。そして、私たちを想像の旅へと一瞬にして連れだしてくれるのです。デザインやアートに定義などなく、既存の表現方法や分野を超えた自由な発想が求められています。視野を拡げ、あらゆる枠を取り払うことで、世界に驚きを与え、人々を魅了する作品が生まれるのではないでしょうか。「イメージメーカー展」は、表現に分野の境界は存在しないことを訴えかけながら、心を動かされるような体験と、幼い頃の無邪気な喜びといった感覚を届けてくれるでしょう。[美術館HPより]
 
ま、そういわれても、グードという人が稀代のイメージメーカーと知らなければ、ふふん、ってなもんですよね。。デビット・リンチだけが知っている名前だったの。
映像を期待したわけですが、意外にも?心象風景とした地味なモノクロのリトグラフが並んでいるだけ。映像ではなかった。ま、それはそれで、枚数があってよかったけど。


それより、時間の経過でモナコ妃のドレスの背中や後に回した手が見えてくるロバートウィルソン氏の映像作品の方がアイキャッチーだったかな


だーけーどー、なんといっても楽しかったのは
実際に回転するきゃりーぱみゅぱみゅみたいな人形とか
私にはそういうイメージに映った)、狭い回廊の右左に並べられたパリ地下鉄の駅の映像、それぞれの駅によって異なるデパート(ギャラリーラフィエット)の広告(そうはいっても、イメージ広告でそうとしらなければただのデザイン広告)の前でメトロを待つ人々の群像、そこに永遠に止まらない超特急の緑の帯のついたメトロが走り抜ける・・・というインスタレーション。


これを眺めていても飽きないねぇ・・・
という感じで。

あと、部屋の順番は入れ違いになりましたが、ヒールレスの上げ底靴フェチ?な  の作品群。考えてみれば当然なんだけど、舞妓さんの履くぽっくりの進化版があったり、









絶対息苦しそうだなーと思われる真空パックになった人たちとその持ち物の写真パネルがあったり。。。なんかスルーできない作品が並んでましたよ。
















ヒールレスシューズは試着したけど、これじゃあ走れないなーー。。。
でも若いお嬢さんは走りはしなかったけど、すっと立って歩いてました。若いっていいなー。。。


とにかく行って体験するのが一番かな。。


イメージメーカー展
21_21 Design Site
2014年7月5日(金)~10月5日(日)

2014年8月2日土曜日

建築家ピエール・シャローとガラスの家 ーーーシャローはモンドリアンのコレクターだったんだ!

知り合いの方が面白かったーというので、ぐるパスのあるうちに行かなきゃ!
ということで、溶けそうに暑い中、出かけてきましたよー、汐留に。。



その知り合いは、もとよりこのガラスの家をご存知だったようで、探したことがあったけど、見つからなかったっていうの。
私は、いえば。。。。知人のようにあらかじめ知っていたわけではないのでお勉強になりました。

1883年にボルドーに生まれ、10年後家族でパリに移住、国立美術学校には行けず、イギリスに本社のある家具会社で家具作りを学んだ、と。
その後の作品はアラバスターを使ったアールデコスタイルの照明とか、実用性としてはどうかわからないけれど。素晴らしく美しいネストテーブルとか・・・・

1929年以降建築に関心をもち、有名なガラスの家を設計することになったと。
丁度4階に上がったところで上映されていた映像でその家を見せてくれていたので、始まる前にプレビュー。
確かに見つけて見に行きたいような素晴らしい家ですね。
私の印象としては、障子がガラスに変わった和風の家のような印象が強いこの素敵な家の天井はとても日本の家とはいえないんだけど、いや、それだからこそ何か郷愁を感じさせますね。窓からみえる緑がいい感じ。

内部ではひとつひとつの部屋を紹介するスライドも上映されていました。


途中の解説で、シャローはモンドリアン、ブラックやピカソのコレクターでもあったとありました。交流していたのはデュフィーとか、リップシッツ、そして正規の家具職人や建築家としての資格はないままレジオンドヌール勲章をもらったとか。。やはりこのガラスの家のインパクトたるやすごいんですねー。。

展覧会の見どころは、

http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/140726/ex.html


展示された家具類はアールデコ様式の美しさがしみじみわかるものばかり、ただし、椅子はちと痛そうなものもありましたがね。。。

会場内のキンキンに冷えた冷房だけではなく、美しいものを見て清涼感を感じることができたのは収穫です。


建築家ピエール・シャローとガラスの家 展
パナソニック 汐留ミュージアム
2014年7月26日(土)~2014年10月13日(月・祝)

 

2014年7月22日火曜日

今年も伊藤若冲の名宝展をじっくり鑑賞させて戴きましたよ@相國寺承天閣美術館


タイトルに、今年もと書いておきながら、去年の感想文が書ききれてないことに気づく私。あはっ。
去年も7月にこちらで開催されていた「伊藤若冲の名品展」(今年は名宝、去年は名品、この違いは何かな?)を見に来て、初めて見る鹿苑寺(金閣寺)大書院旧障壁画の迫力に圧倒され、思わずポストカード全10枚を購入してしまったのでした。感想文書くためにね。なーのーにー。書いてない!
なので、兎に角今年は何としてでも書かないと!

その後、常設展示である「月夜芭蕉図床貼付」と、「葡萄小禽図床貼付」をこれも書いてない「開館30周年記念丸山応挙展」の時に拝んだので、今度で三度目の出会いとなるのですが、床の間の壁に描かれた二作には本当に圧倒されます。これは写真では伝わりきらないんだけど、三面を使った大胆な構図の「月夜芭蕉図」にしても、床の間の違い棚の奥まで展開され、実は対角線上の襖絵に描かれた小禽と、違い棚脇の壁に描かれた小禽が、対になるように空間を立体的に捉え、かつ情趣を加えた意欲的な作品は見れば見るほど引き込まれます。

相国寺の禅の思想に触れ在家のまま仏道修行を行う「居士」だった若沖。「維摩経」にある、悟りを得ていない人間の儚さを例えて「是の身は芭蕉の如し」という形容があり、大きな葉が風に吹き破られて哀感を誘うことから、江戸時代には、芭蕉は「庭忌草」とされ、関西では、寺院にしか植わってなかったとか。
美術館前の庭に植わっているこれは芭蕉?

若沖の生家のある錦小路
辺りには無かったということですよね。でも、若沖は好んでと、いうくらいその外隈描法をいかんなく発揮してますよね。この、「月夜芭蕉図」は、その頂点にあるのではないか、というくらい素晴らしい作品だと思います。解説によれば、若沖の師であった梅荘顕彰常が、この「維摩経」に基き、自ら「大典蕉中」と、号していたことから、芭蕉を画題に選び、芭蕉が人間の仮託であるなら、差し込んできた月光を仏の知恵や慈悲の象徴の光明と解し得るとした若沖の意欲作とのこと。 ま、私には大胆な構図、モノクロなのに、月の柔らかい光を感じる三面を使った立体的な表現ということが、印象の中心であるだけなんですけどね。
さて、今回は、この床の間だけではなく、大書院を取り囲む襖絵が、飾られているのです。去年は無造作に描かれた竹の丸い節が心を捉えましたが、今年は、芭蕉繋がりで、芭蕉叭叭鳥図襖絵襖が、気になりました。
で、去年は見られなかったと思う<釈迦如来像・文殊菩薩像・普賢菩薩像>の巨大な軸に接することが出来まして。その大きさを堪能するため、床の絨毯に座り拝みあげました。
そんなこと、何処にも書いてないから私だけの印象では、あんなに微細に鳥とか虫とか、描く若沖も人はなんか詳細すぎる故の硬さがあって、必ずしも巧いという印象のない私ですが、この菩薩に限っては、その硬さが、うまく神々しさに結びついているような気がしました。

後ね、去年の記憶には、ないんだけど、第一室にあった《山水図》、解説は無かったんだけど、大胆な筆致の墨で描かれた滝と、その滝が流れてくる先に、寺の方丈のような建物の屋根、塔のようなものが屹立している感じとか、画面に少し左寄りの少ない情報だけで、色々な想像が出来てしまうの。素晴らしいなぁ。
その隣にあった《牡丹百合図》はまだ若い時期の作品ながら、その表現が、動植綵絵でのものに近く、近年発見されて以来注目されてるとか。去年もあったように思うけど、改めて虻もか、蝸牛のイキイキした表現力に目がとまりますね。
若沖からは、離れてしまうけど、この第一室に二枚の《百猿図》があったのです。一枚の方は丸に棒のような猿ー良く見るタイプ。
もう一枚は毛並みふさふさの猿たちー良く見ると一匹一匹の表情が違う♪
あ、森狙仙だ♪なるほどね。やはり彼の猿の表現は素晴らしいなぁ~。
素晴らしいと、言えば、この部屋に入った処に展示してある《翡翠細工花入》、トーハクほどのLED照明もあたってないのに、白菜に遜色ないほどの精巧な作りと美しいグラデーションの翡翠の色、花瓶にまとわりつくような、龍の鬚の細かさ、白菜同様薄い作りのこの作品は、いつまでもじっくり鑑賞できます。
さて、その生涯は、師と仰いだ利休同様、為政者によって切腹で幕を引くことになったものの、焼き物でその名を永遠に残した古田織部!今年はその織部の没後400年、と言う事で、第二室には織部焼の小特集が組まれてました。釉薬の色調により、織部黒、黒織部、青織部、赤織部、志野織部があるんですって、しらなんだ。一番目にする緑色のが青織部という訳ですが、実際に、溜まった釉薬が青の器があったのが面白かった。そして、黒織部と織部黒に違いがあるとは!
ここには書いてなかったけど、沓形だけど、全面的に黒釉で、覆われているのが織部黒で、織部独特の優れたデザインをいかんなく発揮した窓絵といわれる文様があるのが、黒織部なんだそうで、形はこちらも、沓形が多いのだそう。勉強のきっかけになり、ありがたいことてす。

まだ9月迄やっているので、京都に行かれたら是非!

伊藤若沖の名宝展
相国寺天承閣美術館
2014年6月15日(日)~9月23日(火) 会期中無休


2014年7月20日日曜日

【超番外編】いよいよ、今日からナイトアクエリアム始まったよ!@新江の島水族館

いや、ここに書くべきかちと、迷ったんだけどさ、以前、ぐるパスで上野動物園書いたしね、やはりこちらが落ち着きが、良さそうなので。
え?何の事言ってるって?
いや、こういう訳だったんですの。
https://www.facebook.com/pikachann2008/posts/667268926675618?notif_t=like

とは言っても、いつもと違って美術系ブロガーは少々、マスコミや招待客の方々が中心でした。

呟きおおくなるかなー、と書いたんだけど~。
実際には、入ってしまったら、もう、呟く暇なんかなくなっちゃった!

入り口部分を含め6ヵ所に展開している3Dprojection mappingに目を奪われるばかりでは、ないの。
やはり、生き物って、大人も子どもも引き付けられる対象ですね。

プロジェクションマッピンクの画像が、展開する裏側でマイペースに泳ぐえいや、ぷかぷが浮いているクラゲ……特に遥か昔に生物班クラゲ担当だった私にすれば、江の島水族館もクラゲも特別な思いがあるだけに他の人より入れこんだかも?
昭和天皇もクラゲにつながる生物のご研究をなさっていたとか、今上天皇や秋篠宮のご研究対象のハゼや鯰の種類が展示されたりしていて、ご研究にちよっと親近感が湧くといえ仕掛け。

いやいや、そればかりではないな。こちらは、特に相模原の生物が多いせいか、食べられる魚や、カタクチイワシのシラスなど、親しみやすい展示が多いから、食育という意味でも、家族にはうってつけかな。
お腹すいちゃうのが、たまに傷だけど。
そうそ、去年世界最大を謳っているシンガポールの水族館でのガラディナーの時に、この水槽見て旨そうだなーと、思わず思うのは、俺たちと君たちだけだよなー!と、中国人に言われたことを思い出してしまいました。

でも、大丈夫。お腹がすいたら、お魚型のスナック(もちもちおさかなナゲット)がたべられますから!
ついでながら、ブルーのリキュール入りナイトアクアブルーというドリンクもいただけるみたい。

さて、外に面しているエリアには海亀やイルカがいましたよ♪

ちょっと狭いプールの中をところ狭しと泳いでいるイルカ同士が争ってる声が聞こえたので、たまたま近くにいた飼育員さんに、やはり狭いとストレスになるのかと聞いてみたら、イルカ同士は社会的な動物だからです、と、ちょいと語気強く返されてしまいました。すみません。
そうそ、ナイトと言うからには、夜行性の魚とかもう少しみられるのかな?とも思ったんだけど、サザエとか出てきてくれなかったな~。難しいですね。
でも、ペンギンの一部は固まってました。、もとい、身体を固めて寝てたみたいで、岩のよえに動かないのが何羽かいたわ。

そんなわけで、夏休みも始まった事ですし、お子さんとお出かけになられるもよしですね!


入り口からプロジェクションマッピングでお出迎え

 

                                          えいは、岩肌にくっついて寝てるのかな?
                                         らせん状の映像早い何を意味してるんでしょうね?
                                                             食べられるおさかな

タカアシガニ


                                             映像クラゲとリアル海月の競演


 

2014年7月12日土曜日

【終了後感想文】勝義よかったなぁーーー!! 超絶 明治の技巧@三井記念美術館


超絶技巧!明治工芸の粋 村田コレクション一挙公開」

近年、美術雑誌・テレビ番組などで、頻繁に取り上げられるようになった明治の工芸。なかでも、超絶技巧による、精緻きわまりない作品が注目を集めています。しかしながら、それらの多くが海外輸出用であったため、これまで日本国内でその全貌を目にする機会は、ほとんどありませんでした。本展では、村田理如氏の収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品のうち、並河靖之らの七宝、正阿弥勝義らの金工、柴田是真・白山松哉らの漆工、旭玉山・安藤緑山らの牙彫をはじめ、驚くべき技巧がこらされた薩摩や印籠、近年外国から買い戻された刺繍絵画など、選りすぐりの百数十点を始めて一堂に展観いたします。質・陵ともに世界一の呼び声が高い、村田コレクション秘蔵の名品が三井記念美術館に勢揃いします。

これぞ、明治のクールジャパン!

三井記念美術館 HPより


最終日が近づいてきてる土曜日の午後になんか、行くもんじゃないわけなんですが、都合がつかず、激混みの中に嵌ってしまいました。
日曜美術館の影響もあるかしら?
行った時には、もともと少ないロッカーも満杯。


それは、さておき。

掘り出しモノその1は金工の正阿弥勝義。
後から出てくる漆工の柴田是真と同じような洒脱さが感じられる第一室の《古瓦鳩香炉》。
これにやられてしまいました。
いや、古い瓦らしく鋳造してあるとか、そういう事は勿論なんだけど、瓦の中に潜む蜘蛛を狙おうとする鳩の目線までもが感じられる殺気だった緊張感。
それでありながら、瓦の文字は「楽」なんだな、これが。
文字が入っている瓦そのものも当節あまり出会わないのだけど、明治に遡ったところでも、やはりこういう文字に出会う事はないかもしれない・・・・ので、きっと勝義の創意に違いなく。。。。
精巧な作りでありながら、にやっとするシーンを作り出してくれるなんて、やるじゃん!
更に、ひょいって、蓮の葉に飛び乗ろうとしている雨蛙が活き活きした《蓮葉に蛙皿》。
第三室にも出てくる、出てくる。小さな作品が並ぶ向かい側の七宝コーナーに比べたら、人が寄って無かったおかげでじっくり眺められたわ・・・・でっかい《群鶏図香炉》とか、ユーモラスな《柘榴に蝉飾器》とか、《瓢箪に天道虫花瓶》、《麒鳳亀龍香炉》とか。。。
単に超絶技巧だけでない、この人の持つセンスと遊び心が私の心を捉えたのかもしれない。
そういう文脈もあって、七宝は、ゴメン、あんまり興味が湧きませんでした。細かい手の跡については感心したけど。なーんか、ごちゃごちゃした感じがねー。まー、好みの問題ですが。
それと、日曜美術館でも時間を割いていた安藤緑山の《竹の子、梅》も、期待が膨らみすぎちゃったせいか、思ったより、プラスチックっぽく見えてちょっと残念。いや、もちろん皮のぎざぎざ尖った感じとか、彩色した感じとかは、素材が象牙ということを考えると凄いんでしょうが。。。
この人と作品を巡っては謎が多いそうだけど、ただただ見て思うことは、彫刻していくうちに、もっと、もっとリアルに見せたい、ただ一心だったのではないか?その行きつく先が、あの作品になったのではないか。
何のためにとか、誰のためにとか、でもなかったのではないか・・・なーんんて想像してしまいます。自己満足というのではなく、職人の矜持?
ただ、個人の好みとしては、リアルの追求だけではなく、是真や勝義のような遊び心がほしかったな。だからという訳ではないけど、小さい作品の方が良かったな、私には。

掘り出しモノその2は刺繍!去年の竹内栖鳳の下絵ベースのベニスの風景もなかなか迫力あって、凄いと思ったのですけど、今回は金糸を使った作品が多かったせいか、また、真近でみられたこともあり、角度の違いによって様々な色合いを魅せてくれるので、鳥の毛並みとか、絵画では出しにくい錦の色合いが美しい作品が見られて幸せ!惜しむらくは前期の孔雀、見たかったなー。

掘り出しモノその3
漆工は柴田是真は勿論の事、白山松哉が何れも洒脱。す、て、きーー♪

薩摩焼きは細かいけどさ、2009年に江戸東京博物館でやっていた薩摩焼の展示の時の方が、技法というより、全体のバランスが良い作品が多く印象的だったせいか(、そして大振りだった)今回は、それ程感動は無かったというのが、正直なところ。
自在は、去年のトーハクみたに動かしているところ見せてくれるとよかったなー。


そうそう、今回の企画も山下先生監修でご活躍ー
ーなので(?)、見開きパンフレットにも何気にヤマグチセンセのイラストが。。。っつか、最近ちょこっと登場多いよねぇ。。。ファンとしては嬉しいけど。

超絶技巧!
明治工芸の粋ーーこれぞ明治のクールジャパン 村田コレクション一挙公開
2014年4月19日(土)ー7月13日(日)  この展覧会は終了しています。

2014年7月5日土曜日

冷たい炎の画家ーヴァロットン展 @三菱一号館美術館 絵を描き続けることの幸せと家庭での孤独と

ブロガー内覧会には当たらなかったけど、ちょっとしたご縁のおかげで、短期間の間に二回行くことができました。
宣伝とか、新聞の評とかには「冷たい」とか「緊張感」とか「不安」「覗き見」「冷淡な視点」「異端者」とまぁ、並べるだけ並べられたあたたくないお言葉ばかり。
確かに、やたら裸婦、女性の臀部を意識していて、「女性が怖い」と思われる表現(神話を題材にしたシリーズに顕著)「家庭内での孤独」(必ず絵図が紹介されている《夕食・ランプの光》に代表されるような)という印象は強い。

でも、二回見てこの人の絵描きとしての真骨頂は、やはり、それで認められた木版画だとあらためて感じましたね。
最初に認められたという《街頭デモ》1893年を含み、1891年から1901年のわずか10年の間に120点以上の木版画を制作したという理由はわからないけど(日本の浮世絵の影響なのかな?)、意外にも小さいサイズの(ポスターになっているせいで、《嘘》はもっと大きいのかと思ってたけど、《嘘》を含む《アンティがミテ》シリーズの木版画、というよりすべての木版画がほぼ同じくらいの大きさ、20センチ×25センチ前後)すべての作品が生き生きしていて、すばらしい。
特に気に入ったのは《暗殺》‐ー振り上げているナイフの一部しか見えないのにこれからどんな悲惨なサスペンスが待っているのか。。。とドキドキしちゃいます。
それと版数を重ねない為に版木を途中で切ってしまってそれを集めて《版木破棄証明のための刷り》なーんていうのもあって楽しい。
楽しいと言えば、蔵書票もあったなぁ。なぜか水浴する女性ばかり。
章のタイトルにもなっている「黒い染みが生む悲痛な激しさ」と言ったのはタデ・ナタンソン、ナビ派を擁護していた雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者で《ボール》の場面になった別荘の所有者でもある人で、最初にこの雑誌に木版画を載せてもらったみたい。
木版画の素晴らしさは、最後にも出てくる従軍画家としての作品《これが戦争だ!》シリーズも全く衰えがないし。。戦争といえば戦争犠牲者への視線を感じることができますね。

個人的には、この人って、天才的に上手いわけではないと思うんだけど、人には恵まれていたのではないかな、画家として、後ろ盾がなかったわけではないし、疎外感のある家庭生活だったかもしれないけど、経済的に恵まれることになったわけだし、何より、年上の奥さんがモデルになっている作品も多いわけで・・後姿ばかりでなく神話シリーズの顔とか。。
《夕食、ランプの光》は確かに家庭内の孤独と結び付けられて致し方ない描き方だけど、考えてみると、やはりお金持ちだったカイユボットの絵にも皆が視線を合わさない食卓の場面はあったわけで、血を分けていてもそんなもんじゃないの?とつっこみを入れたくなってしまうわけで。。ま、勿論、ヴァロットンの場合は、違和感について残しているみたいだから、幸せっいっぱいだけではなかったのでしょうけどね。

そして油彩。確かに、今回の展覧会のおかげで《ボール》《貞淑なシュザンヌ》(おっさんたちの禿げ頭のぴかぴかぶりが印象的。。)《夕食・ランプの光》(ランプに猫ちゃんが)が刷りこまれたことは事実なんですが、《ボール》は2010年のオルセー美術館展に登場していたのにまったく記憶がないの。二つの視線というのに。。。
油彩の出色は《赤い絨毯に横たわる裸婦》かな。顔怖いけど。大好きだったというアングルへのオマージュとしては《トルコ風呂》よりもいい出来。。

あ、あとね、《ワルツ》は、スケートをする版画に印象が似てるの。ついこの間展覧会があったアレなんだっけ・・・うーん思い出せぬ。

ま、それはともかく外国人のナビ派とも言われ、ナビ派のなかでもうしろにたって、みんな視線があってないない《5人の画家》の時からクールな表情を浮かべていたこの画家が異質なことは確かかな。

なぜか、リュクサンブール公園を描いた《公園・夕暮れ》のプレートには猫の絵があったり、2階の部屋に行く手前の壁にも木版画のモチーフがあったりと、こそっと楽しい発見がある一方、三菱一号館のヴァロットンとナビ派の芸術家たちコーナーの壁紙がやたら染みがついていて汚らしかったのか気になりました。


あと、改修のため1年半休館する静嘉堂文庫の東洋陶磁コレクションが普段はビデオを見せてくれる部屋にありました。たった10作品なんだけど、ちょうど根津でやってるカラフルに対応するような清朝の単色釉磁器が特集されていまして、お勉強になりました。特に《藍釉暗花龍文盤(らんゆうあんかりゅうもんばん) 一対 「大清康熙年製」銘》はよくみないとわからない(だから暗花)細かい線彫りで皇帝のシンボルである五爪の龍が描かれているんですね。とても品のいい茄子紫の色というばかりではなく、そういったところに品格がある良品でした。

ヴァロットン‐冷たい炎の画家
三菱一号館美術館
2014年6月14日(土)~9月23日(火・祝)
同時開催
静嘉堂の東洋陶磁コレクション第一回 艶めくやきものー清朝の単色釉磁器
 

2014年6月25日水曜日

《台北「國立(こくりつ)」故宮博物院》 神品至宝展 やっぱすごいわ。。

 

台湾の國立故宮博物院に行ったのは1980年代の半ばだから今か30年位前にもなるんですねー、遥か昔過ぎて、そして広すぎて、疲れすぎて、何を見たのか殆ど覚えていないんですよねー。
唯一鮮明に覚えているのは象牙の細工された玉の中に入り子のようにいくつもいくつも入っていて、でもどこで閉じたのかがわからない。。。まことに不思議な凄い作品な訳で。。。
 
 
不思議というか凄いと言えば、194749年頃の中国国内での国共内戦(蒋介石率いる南京国民政府と毛沢東率いる中国共産党軍の覇権をめぐる内戦)の敗色濃厚となった際に、これだけ大量の貴重な美術品を北京から広州→重慶→成都→台湾に運んだ事ですよ。(と、私は聞かされておりました。)選りすぐったものだけを台湾に運んでいるから北京の故宮博物院には残っていない、という話を昔は聞いたものだけど、実際《清明上河図》を始め200点ばかりが来日した時は、そんなことないじゃん!と思わされるだけの優品が多かったわけで、今回ほぼ粗忘れてしまっている私にしてみれば、それを上回る作品たちに会える機会を逃すわけにはいきませんですよね。。。
 
が、しかーし、ここで一つの問題が・・・
この台北國立故宮博物院の表記を巡って政治問題の陰が落ち。。。
開催が危ぶまれるまでに至ったのは誠に遺憾でありまする。
政治的配慮で国として台湾を認めることができない問題と、固有名詞として「國立」が台北の故宮博物院の名称が入っている事を同列に議論しないでほしいなー。
ま、事なきを得たようなので、ほっとしましたが・・

もーーー!!
 
しかし、先日のキトラの事を考えると限定公開の翡翠でできた白菜を見る為には早めに行かねば。。。そうだ二日目の25日は予定がないからこの日にしよう・・・と思っていたらヴァロットン展のブロガー内覧会のお知らせが・・・うーん、それじゃ、当ったら金曜の夜ね・・・と取らぬ狸の皮算用をしていたのですが、残念月曜になっても当選通知は来ず。。
涙。
 
でもね、それが正解だったかもしれない。まだ夜間開館延長が浸透していないせいなのか、昼は170分待ちで諦めたという友達のレポートを見てドキドキしていた割に、丁度切れていた年パスを買い直し、入館した18時頃で10分待ち、いや実際は映像を二回みられなかったのだから5分くらい?しか待たないのに「お待たせしました」と深々と頭を下げてくださる係の方に促されて、先ずは真近だけど動きながら見なくてはならないインナーサークルに。。
開催前の内覧会に行った知り合いから第五室の中で一作品だけ宝石のように飾られていると聞いていた通り、ライトに照らされた白菜、正式には《翆玉白菜》清時代18-19世紀・・・煌めいていますね。・・・
 
というか、思ったよりも小ぶりで、白菜の厚みは薄い。そして白の部分と深い緑、淡い緑のグラデーションの美しい白菜は純潔と多産(イナゴ)を象徴するということで婚礼道具として持って行ったという皇妃が同じように華奢で優美で美しい人なのではないかと思ってしまうような女性的なフォルムと瑞々しさを魅せてくれていました。イナゴとカマキリは殆ど白菜の葉の色に同化しているので、近くでみてもなかなか認識がしにくいのだけど、細かい造作をじっくり短眼鏡で見る為に、今度は立ち止まっていい方のアウターサークルへ。
 
おしむらくは、白菜の頭の部分の中心が一番濃い緑という部分が、私の背丈では見る事が出来なかったこと。もう少し、低めに展示してくれると虫たちも含め良く見られたかもしれないんだけどなぁーー。
ま、でも行列しているときに見せてくれるビデオで言うとおり、白菜の外の葉っぱの白い部分から透けて見える内側の緑色等、この間の三井で見た安藤緑山の超絶技巧《竹の子》よりはるかに凄いのではないか・・・??(いやそもそも、翡翠の玉と象牙とどっちが硬くてどっちが難しいのかすら技術的にはわかりませんが)と思わされるような素晴らしい「神品」である事を確認させてもらいました。こんなに素晴らしいのに覚えていないなんて、きっと展示されてなかったのよね?と自分を慰めつつ、じっくり対面できたことに満足。
平成館に移り、残りの「神品」たちにもお目にかかりました。
解説によれば、こちらの収蔵品は宋(北宋・南宋)・元・明・清を中心にした70万件。70万っすよ、それを戦火を逃れる為に大八車みたいなのに積んで流々転々としたと想像するだけで圧倒されるわけで。。
今回の展示の解説は中国と皇帝たちの歴史を再確認したり、不勉強な部分を補う(こっちの方が圧倒的に多い)という意味でも分かりやすく、貴重な展覧会でした。
 
1  中国皇帝コレクションの淵源―礼のはじまり
今や「礼」は日本のモノのように思いがち(私だけ?)ですけど、そもそも古代の王侯は青銅器によって祖先を祀り「礼」という制度に整備されたんですって。皇帝たちは青銅器を文明の象徴として「尊」で様々な文物を蒐集、それが皇帝コレクションとして形成され、君権の正統性を象徴する特別な意味を与えられていたそうです。それを示す教本のような《周礼注疏》(南宋時代)も展示されていましたが、いかんせん読めないのがつらい。
あとね、古代の作例に倣った作品を作らせると言う事を皇帝たちが行っていたようで、最初の部屋で出てくる古代(戦国時代―前2-3世紀)の動物型の青銅器《犠尊》、これカバみたいな(隣にいた人は豚みたい・・と言ってたなぁ、犬にも見える)ぷっくり横に広がった胴体と愛嬌のあるお顔をした酒器(そもそも「尊」が酒器でしたよね、)なんだけど、背中から酒を入れてそのカバだか豚だか犬の口から注ぎだすなかなかの優品。同種の青銅器が古代の文献『周礼』や北宋皇帝コレクションカタログ『宣和(せんな)博古図』にも載っているそう。これ、形も愛らしいのだけど、胴体一面に彫り物のように柄が施されていて、とても美しいの。
同じケースの隣には、その古代の作例に倣った元~明時代に造られたという銅器の《犠尊》が、あたのだけど、戦国時代のに比べると大らかさが消えているなぁー。彫り物部分もかなりはっしょっちゃってるし。。これで「倣古」といえるんか?
それはさておき、古代の文物収集とともに倣古を作り出していったことは古代の伝統を復活させることで中華の正統な皇帝であることを示す為って。。。なんか、最近も似たようなことしてるよね、、あの国の指導者は・・・(イヤタイリクノホウノハナシデスガ)
 
2 徽宗コレクション―東洋のルネサンス
北京の方の展覧会(2012年ーーまだ感想アップしてないのよねぇ)の時も痩金体の美しさにウットリさせられた徽宗皇帝(北宋)の時代に「雨上がりの空のように白みがかった優美な色」を特徴とすう汝窯(じょよう)という窯で作られた作品《青磁輪花碗》のケースが第二章のスタートです。
汝窯で作られた磁器で現存する70点のうち21点も有すのが台北の故宮。この汝窯の秘色青磁が後代でも理想とされたとか。
たしかに縹色(はなだいろ)の美しい色合い、キレイな貫入のある《青磁円洗》ステキー♪
そしてお待ちかね、徽宗帝の美しい痩金体《楷書牡丹詩帖頁》、絵画もよくした彼の《渓山秋色図軸》も悪くない。

3 北宋士大夫の書―形を超えた魅力
歴史では習ったはずだけど、忘れてましたね。唐の時代は役人は世襲制、しかし宋の時代は科挙に合格しながらも、儒教的学問と教養を身に着け隠遁者のような生活をしながら絵を描き(文人画)。。という人たちのことなんですね。
なんか、今の国にはそんな人いるんだろうか?と思ってしまうけど、猛勉強をし教養を身につければ身に着けるほど、浮世の世界の虚しさなどを感じていたんでしょうかねー。
それはさておき、美しい書が並んでいたのだと思うのだけど、判断能力なし。
あ、米芾(べいふつ)と言う人は知ってるよ。。な感じ。

4 南宋宮廷文化のかがやき―永遠の古典
北半分を「金」に占領されて北宋は杭州に都を移し南宋となり、そこで宮廷絵画や磁器などの伝統文化を継承しながら、さらに洗練度を増していくわけですね。北宋に倣い青磁を作らせもした。
例えば、《青磁輪花鉢》白濁した淡青色の釉が美しーーーい!口縁は釉が薄く素地が透けて細く削られた高台たたみ付は露胎で黒色を呈する所謂「紫口鉄足」を有する・・・・・と解説にはありましたが、ただただ美しい。。としか私には表現できないな。

文字の方も・・・徽宗帝の第九子高宗による《行書千字文冊》
王義之を習いこんだというその文字は美しい筆致。
高宗は書画の鑑識に詳しい文人でもあったようです。 

その他蓮の枯葉を象った玉器、手に収まりがよさそうで品がいいなあ。泥の中にあっても汚れない蓮は文人には人気のデザインだったそうで。。

あと、《明皇幸蜀図軸》は唐時代のものですが、当時の山水画は顔料を多用した「青緑山水」方式。結構大きな画面のこれらの色付き現存作品は世界に十指に満たないそうです。
その後水墨画を描き始めたのは五代北宋初期。逆に青緑山水は、当時の遣唐使が持ち帰ったのでしょうね、日本に伝来して、「やまと絵」になり今日の「日本画」の源流となったというわけのようで。。

5 元代文人の書画―理想の文人
 飛び切り美しい文字が並ぶ《行書間居賦巻》が印象的な趙孟賦は南宋の皇室末裔ながら心ならずも元に仕えた人。そんな苦しい心もちでありながら復古主義を掲げて伝統的な書画を見事に復活させたとか自ら仕官を拒否した士大夫の書画に孤高の精神を盛り込み理想の文人とされたとか。名前くらいは知っていたけど、改めて解説読むとふむふむ、っていう感じですね。

同じ趙孟賦の《調良図頁》は白描画。白描画は何も装飾や技巧を好まない文人たちに好まれたそうで。平安の頃の日本の白描画はどうだったんだろう。もっと優美やデザイン的なイメージがある私にはその後の日本でも好まれた文人画の人たちがどう思っていたのか気になるところですねぇ。

こちらのセクションには元末四大家と呼ばれる倪賛、黄望、呉鎮、王蒙のうち3人の作品があってもっとじっくり見たかったんだけど、まだ第二会場にも達していないのに、あと40分くらいしか残っていないという現実におののいて、このあたりから集中力が落ちていましたね。趙孟賦夫人の菅道昇が描かれていた《元人集錦巻》なんかじっくり見たかったんだけどなー。後期にしか見られない赤壁図もあるから、もう一度行かないとあかんな。

6 中国工芸の精華―天と人との競合


残された鑑賞時間が短くなったものの、ここからが凄かったんですよね。いやー三井の超絶技巧、去年の竹内栖鳳展でも感動した刺繍の作品群が凄い。どれも凄いのでもっとみていたかったー。
それと漆芸が凄いのです。時間の関係でじっくり見られなかったけど、一見しても《八宝文堆朱方勝形箱》など美しいの一言。《五穀豊登図存星長方合子》はこの間根津で見た存星の作品より格段に凄い(ゴメンナサイ)。《梅花彫彩漆輪花合子》も素晴らしい。
百科事典の《永楽大典(梅)》《永楽大典(游)》は字も絵もきれいだし。。
キレイさといえば《妙法蓮華経》。平家納経のように紺地に菌の文字がまためちゃくちゃ美しい。

この先にはあと4章あるんですよ。でも、落ち着いて見なかったので、次回行った時に感想書き足すかな。。



特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」
平成館 特別展示室/本館 特別5室  2014年6月24日(火) ~ 2014年9月15日(月)
《翠玉白菜》は7月7日まで!
東京国立博物館
 


 

2014年6月17日火曜日

描かれたチャイナドレス@ブリヂストン美術館のブロガーナイト(内覧会)に行ってまいりました♪



中国 は、古代から近世にいたるまで、つねに日本をリードしてきたアジアの先進国でした。その日本は、明治維新以降、ヨーロッパに目を向け始めます。しかしそれでもなお、日本人の心から中国への憧憬や愛着をぬぐい去ることはできませんでした。

大正時代、日本で中国趣味がわきおこります。芥川龍之介や谷崎潤一郎らが中国をテーマにした小説を次々に発表します。同じように、美術でも中国ブームがあらわれました。油彩画の世界では、藤島武二が中国服を着た女性像を描き始めます。ツーリズムの発達によって渡航しやすくなったことから、児島虎次郎や三岸好太郎、藤田嗣治、梅原龍三郎らは、中国を実際に訪れて題材を見つけました。一方、興味深いことに、藤島や岸田劉生、安井曾太郎らは、日本にいて、日本女性に中国服を着せて描きます。そこには、ヨーロッパから学んだ油彩技法を用いて、日本人が描くべき題材を求め、東西文化の融合をめざした到達点の一つを見ることができます。

このテーマ展示は、1910年代から40年代にかけて日本人洋画家が描いた中国服の女性像約30点で構成されます。成熟していく日本洋画の展開をお楽しみください。

ブリヂストン美術館 HPより・・・


今年から年パス買ったのに、なんちゃって外交やらなんやらで、会期は4月からだったというのに、ブリヂストンに行く時間がぜーんぜんなーーい!(ダッテ夜間延長している金曜とかに予定入れたりしちゃうから・)と焦っていたある日、ステーションギャラリーのフォートリエ展の感想文を書くために所蔵作品の確認をする為HPを開いたところ・・・あれー?ブロガー内覧会があるーーーーー!!しかーーし、先着100名、募集始まって既に1週間・・・思わずつぶやいちゃいましたよ・・

きゃー。今日になってから気づいたブロガー内覧会@ブリヂストン。bridgestone-museum.gr.jp/news/2014/270/ さっき申し込んだけど、ポストされてから既に一週間近く、もう先着100名に到達してそうだしなぁ。。。くーーー、折角空いている日だから行けるといいんだけどなぁ。。 2014.06.03 15:47




営業時間中だけど・・・ご返事がこない・・・うーん既に100人超えちゃったか??

ブログの内容によってはお断りみたいな注意書きがあるけど、そういう事じゃないよね、大丈夫よね?と思わず数少ない公開ポスト(あはっ、書きかけのポストは一杯あるのだ。)を読み返したりして。。

その夜。。。

「先ほどこちらのメールに不具合があり、送信できたかどうか確認ができませんでしたので再送させていただきます。この度は「描かれたチャイナドレス」展ブロガーナイトにお申込みいただきまして、ありがとうございました。このメールの内容にて、お申込みを完了いたしました。」やったー!!ってか、最初のメールも同時に来たー!!


・・・という訳で、うきうきルンルン(古っ!)で、なんちゃってチャイナドレスに着替えてGo!チャイナ着てきたりするともらえるというのは、これかな?
メモパッドとボールペンのセットを戴いて、更にフォーチュンクッキー付のウェルカムドリンクを戴き、最初のポストをね!https://www.facebook.com/pikachann2008/timeline/2014#!/pikachann2008/posts/649892968413214?notif_t=like

・・とはいえ、ブリヂストンの場合は#(ハッシュタグ)で同時進行的に呟く方式ではないので、気は楽。


今回の企画をされた貝塚学芸員が解説をしてくださいました。

纏めて解説方式でなく作品を回りながら熱心に愛情をこめて解説してくださる姿がいとおしい。これができるのも、二室に約28点(後期)程度だからかな。

後期の目玉の《金蓉》安井曾太郎@東京国立近代美術館蔵は大好きな作品なので、修復前は勿論、修復後も何度となく近美で見させていただいているけれど、その他の作品は、私にとっては、ほぼ粗、お初にお目にかかる作品たちばかり。だって、今回は石橋財団がお持ちの二点を除いて、略全作品を日本の他の美術館から借りてきて展示されているんですもの。いつもは手持ちの絵画を色々なテーマで魅せてくれる企画力のブリヂストンだけれど、今回は、企画力はそのままに、しかも短期間に(昨年の8月から、前期開始の4月までの約8か月)よくぞ、貸借交渉を纏められたものですねぇ。。。

しかし、その成果あって、展覧会そのものは「一部から」大変ご好評をいただいております、でも、図録は少々売れ行きが・・・・とおっしゃり、参加者を沸かせる貝塚学芸員。

図録をふやさない決意を固めていて、カイユボット展の時だって我慢したのに・・その甘言(笑)にのって(?)買ってしまいました。

でもね、宣伝するわけではないけれど、今回写真撮影できない作品とか、解説が充実しているので、買ってよかった図録でした。オススメです。(マジメに申しております)

どれも素敵は作品を詳細に解説戴いたので、そこで学んだ事は後述するとして、大変印象が強かった作品を二点あげるとすると。。。。

久米民十郎《支那の踊り》・・・・・

久米民十郎《支那の踊り》


誰にも似ていない、なんだ、これは!この不思議なフォルムの女性は!? でも流れるようなそのデフォルメされた肢体は画面の中心で確実に舞っている!その優美な線をかたどるチャイナドレス。。。 同じく参加の美術友達が東郷青児のよう、と言っていたけれど、画風が似ていないのに、そのイメージも若干。。と思うのはその細く長く伸びたとがった三角形の手指のせいかしら。良く見れば、首は異様に太いのにね。そして、まげた足の内側は紫なの、どんだけ長い間ぎゅーっと折り畳んでいたんだか!

後で解説を伺ったり、図録を読むと英国に留学し渦巻派というムーブメントに加わった彼は四度目の英国渡航の前日に横浜で関東大震災に遭い、泊まっていたホテルの下敷きになって30歳の若さで亡くなったそう。久米建築事務所(現久米設計)の創始者久米権九郎のお兄さんというのだけど、久米設計は耐震設計で有名だから、兄の死が少なからず影響を与えたのかしら??・と、妄想の横道にそれること暫し。

この作品は1920年、27歳の時の個展以来行方不明だったのが87年後に永青文庫で見つかったとか。今回の展覧会には同じく永青文庫で正宗得三郎の《中国服を着た女》
 
 
正宗得三郎《中国服を着た女》
モデルは《金蓉》の小田切峯子
 
2007年に見つかったという話だったから、永青文庫にはまだまだ見つかってないものが一杯あるんじゃないかとか、結構鷹揚な管理だったのかなーとか、またまた余計な事(妄想)を・・・。いかん、いかん。

貝塚さんのお話では、陶板のような上に乗っているという言い方をされていたけど、そう見ようとすると、陶板部分はソーサーで、彼女はカップのようであり。。。でも、私には、陶板部分は、絨毯、それもトルコを感じさせる絨毯のように思えたのは、彼女の動きがトルコのダンスをする人の絵を思い出させられたからでした。

さて。

もう一点は・・撮影禁止の(なので、今ならコチラご覧ください→http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

藤田嗣治《力士と病児》@大日本印刷蔵(役員室に掛かっているとか)

いやー、この力強い表情、うまいなぁー。顔に湿疹なのか、魔除けの印なのか赤いぽちぽちが縦に並んだ辮髪?(その変形?)の赤子とそれを抱く赤い頬、でもモダンガールの雰囲気の黒い緩いガウンのような中国服を着た母親、構図も背景も、一人一人の表情や表現もとても強い印象です。

乳白色の時代から一度離れていた時代に描いたという《カルポー公園》の事を、フジタと言われてもわかんなーい、と、くさしたhttp://pikarosewine.blogspot.jp/2013/06/paris-1900-1945.html

私ですが、(まぁ、結果として、名前も絵も頭の中にすっかり入りこんでしまいましたがね。)これは、フジタとわかる、わからない以前に、ぐっと引きつけられます。魁偉とのご説明でしたが、なかなか、頼りがいのあるかっこいい風貌のこの「力士」、同じ人物を取り上げたという《北平(ぺいぴん)の力士》も是非展示したかったそうですが、できなかったととても残念そうな貝塚さん。うん、確かに横に並べて魅せて欲しかったなぁ・・・こっちは、行けばみられるというので、秋田行かなきゃ。

この絵に引き寄せられたもう一つの理由はレンガの壁を中心にした背景の右上の黒い窓枠のような中にモンドリアンのような黄色と青、赤子の衣装の赤、母親の頬の赤と黒いローブ、そして、力士のシャツの白、左上の黒地に白い文字が描かれた看板のようなもの、その黒い文字の下は赤い四角、床の肌色系のタイルと、何だろう、四角や長方形といったカタチと赤白青黄黒という色を意図して、人物を三角形に置いて更に力士の堂々とした体躯が目に入るようにしたのかもしれない・・と思えたからかなぁ・・

重厚で力強さのある印象的なフジタでありました。


いやー、例によって、二点だけで既に紙幅を使っていますが、まだまだ行くよん。

第一室の最初を飾るのは、今企画展の副題を飾る藤島武二の≪匂い≫。最初にタイトル見た時はピンとこなかったんだけど、モデルがいつている肘のまえにある嗅ぎたばこが、あるからだったんですね。はっきりした顔立ちなのに、何故かもよんとした、彼女の顔は、周りの花。。。というよりは、今回塗られた赤の壁を反映しているかのように、照らし出されている感じ。
藤島武二 《匂い》

 そうそう、トーハクには150人のスタッフがいて、壁の色などをデザインされる専門の木下さん(という名前までだされてましたねぇ)という方もお出でになるけど、うちは担当学芸員が決めるんです、と、うらやましそうな口ぶりではありましたが、全てが自分で出来るというのも大変だけど、楽しくやりがいありそうですよねぇ。
少なくとも、今回はアジア、中国、日本(日の丸)につき、日本人がイメージする赤を壁の色にされたようです。仰るように全てがピッタリとくるわけではないけど、赤を基調にした色彩を使っている絵にはかなり、自然に入ってきて、あまり、煩い感じがなかったからに、成功している気が。

 藤島は短いとはいえ、フランス・イタリア(ローマ)に二年ずつ、そして、朝鮮半島でも勉強、絵を描くとの試みをしています。それだけに、フランスが北アフリカや、イタリアを見る眼差しに似た感覚で、朝鮮半島や中国に対して目を向けていたのではないか、との解説。そして、フランスでルネッサンス期のイタリアの横顔の肖像画に触れて模写などをしたことがきっかけなのか、横顔が美しい日本人が殊に少ないとして、めぐりあったのが、かつての竹下夢二の愛人の佐々木カネ子ヨ(かねよ)。
いや、残っている写真も美しい顔立ち、



カネヨの写真を見せながら解説される貝塚学芸員


私にはその最も美しい顔立ちを表現していると思われるのが≪芳 蕙≫(参考図版)
参考図版 藤島武二《芳蕙》
のパネルでしたが、帝展で発表されて以降行方不明だということ。それはそうよね、消失していないとしても、、誰にも見せないで毎日眺めていたいような美しい顔立ち。出てこないわよね、そうそう、簡単には‼
そして、いかにもルネッサンス時の肖像画にあるような背景の空と雲も、彼女の美しさを際立たせていますよね、本物が見てみたい。。。。
背景といえば、今回のポスターにも使われている≪女の横顔≫
藤島武二《女の横顔》
の背景もダヴィンチに出てきそうな荒野を想像させる背景。イタリアかぶれ、、、もとい、憧れのルネッサンス様式で、中国への憧憬を描く藤島が、この横顔シリーズを描いていた1920年代は、日本にチーパオブーム即ちチャイナドレスですな、が訪れていたとか。ま、といっても、一部の上流階級に、ではないかと思うけど。だって、銀座などで常に纏っていた中国服で歩いていて中国人に間違えられた小田切峯子の事を外交官の父親がつけた愛称が≪金蓉≫というからには、やはり珍しかったのではないかなぁ、とも思い。
それはともかく、中国服に魅せられた藤島は60着も取り寄せて、モデルに着せたというんですね。聞きながらマティスが、モロッコに行った折に、彼の地の生地を買い集めたことを思い出し、フランス人の北アフリカに寄せる眼差しと日本人である藤島が中国に向ける眼差しと共通といったことを仰る貝塚さんの解説が納得できるものに聞こえ。

同じく中国服に憑りつかれたというのが、小林萬吾。ラピスラズリでも使ったのではないかと思われるほど美しいひかひかしたブルーの中国服の女性を描いた≪銀屏の前≫を見たオルセー美術館の館長が、色が美しいと言われたとのエピソードが紹介されましたが、サインがデカすぎ!自己顕示欲強そうだなー。
小林萬吾《銀屏の前》

その、萬吾に東京美術学校(芸大ですな)で師事した矢田清四郎の卒業制作作品と言われる≪支那服の少女≫の清楚さと気品にうっとりする人も多いのではないかしら?
左の窓から差し込む光に少女のうつむき加減の斜めからの顔の雰囲気は、全然似ていないのに、フェルメールとか、ああいった窓からの光や静謐さと共通項を見いだそうとする自分がおります。
(残念ながら、この作品は撮影ができませんでした。会場で確認くださいね、まだやっているので)

光が当たっていないのに、何故か、後宮の長ーい廊下に差し込む光を感じてしまったのは、恩地孝四郎の≪白堊(蘇州所見)≫。正面の窓のような長方形の中には幾何学模様の格子、これを中心に天井や壁の線だけで構成される画面のほんの少しのスペースに青い中国服の女性の後姿をちょっとだけ描くという、洒落た構図が素敵。


恩地孝四郎≪白堊(蘇州所見)≫


取り寄せができない場合は、作ってしまえー、とばかりにフランス製の生地をもはや、中国服と言えるかどうか分からないけど、奥さんに手作りの中国服を着せて描いてしまった強者はーーー正宗得三郎です。
正宗得三郎《赤い支那服》

さて、中国服描きたい、描きたいと駄々っ子のように言ってた割には一枚しか描かなかったという小出楢重。上海出身のダンサーモデルに「似とらへん!」といわれちゃったらしいのだけど、そのダンサーが本名を憚ったので≪周秋蘭立像≫と、一字変えたくらいだから、お顔も気を遣って重子夫人に似せたのかもしれないですねぇ。そんな優しいところがあったから、亡くなった後に重子夫人がリーガロイヤルに度々訪れて、絵とそして亡き夫と、会話してたのかも。。。

去年エミールクラウス展で、俄かに私の心に入り込んできた児島虎次郎。


でも、あの時は二枚(あれ一枚ダッタッケカナ)、しかなかったし、その後こちらで一枚見たんだっけか?
それが、この企画展では、なんと、四点、解説の時に見せていただいた図版も入れて五点に出会うことができたのは行幸です。

そのうち印象的だった二点・・



児島虎次郎《西湖の画舫》
 
児島虎次郎《花卓の少女》

この人は、欧州のサロンに作品を応募する為、東洋を意識した作品を描いたそうですが、 《西湖の画舫》は100号より横の幅が長い大画面に カラフルでエキゾチックな中国の服装の人たちが画舫という、屋形船の中国版、いや、日本の屋形船と比べるのは申し訳ないくらい立派な船内で二胡を奏で、歌を歌い、宮燈の赤い房がたなびく程の涼風を感じながら話に興ずるといったシーンが描かれています。なんでも資料が少なく画舫の内側迄描いてくれているという意味でも貴重な作品なのだとか。。
もう一枚は《花卓の少女 》
クラウスの外光派的な要素なのかどうか、と言われるとよくわからないけれど、明るい色使いはやはり抜群のものがあるのではないかと改めて思ってしまう作品です。紫の色がきれい。
エピソード的には京劇の派手な化粧を取るととても清楚なイメージの女性であることがわかって、黒のチャイナドレスを着た姿を描いたという《中国の少女 》も記憶には残りました。やはり、はバックはカラフルですよねぇ。。。これは師匠のスタイルに近いかな?
 
児島虎次郎《中国の少女》(一部・・下の方影ニナッテシマッタノデトリミクングしました

さて、ここからは撮影ができなかった梅原龍三郎の作品。彼の作風は、ともすると、マティスに酷似しているようにも思えるものがあるのですが、展示されていた《姑娘とチューリップ》なんかも本当にそんなイメージ。違うのは、女性の顔が東洋人で、着ているものが中国服。でも結構好きな絵だなぁ。。中国が気に入って四年の間に6回、しかも1月半とか数か月とか、長期逗留したというだけあって午前中は風景を描き、午後は姑娘を招いて中国服の人物画を描くという精力的な毎日を過ごしていたそうです。風景画は有名で、知っていたけど、中国服の人物画というテーマを持っていたとは知らなんだ。梅原も「中国の女性は美しい。すべて描きたくなる」と言ってたとの解説、図録には更に「今日の日本の女はそう描きたくないが」という前文がありました。藤島と同様ですね。
 
まぁ、他にも色々解説もして頂いたのですが、あんまり長くなっちゃっうのと、いつもと違って会期終了後にのんびりアップしたのでは、ちょっとは宣伝してね、という趣旨もボケテしまいますからね。。感想文はこの辺で一旦ストップ。
 
 
 
今回全てではないのですが、常設の一部のお部屋の写真撮影も許可して戴きました。
開館60周年を記念して常設展示の内容と九州の石橋美術館の作品で構成された二年前の「あなたに見せたい絵があります」展のブロガー内覧会の時にも撮らせて戴いたけれど、今回は企画展の範囲を超えた部分なので、有難い事です。
なので、ちょっとだけ・・・
 
 
普段はじっくり見ない古代美術コーナーで横顔を撮った(笑)

 
いやいや、今回も内容の濃い企画展で大変楽しめた上に、丁寧な解説、本当にありがとうございました。
翌日もう一度確認する為に、もう一度(ヨウヤク年パス使って・・・苦笑)行きましたよ。

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。私の写真の質ではそんなことはないかとは思いますが、転載はなさらないでくださいね♪



描かれたチャイナドレス─藤島武二から梅原龍三郎まで
ブリヂストン美術館
2014426()2014721()