2013年1月27日日曜日

細長い理由は。。。。エルグレコ展


1月の最終日曜日、お誘いがあって、夕方四時集合して鑑賞しに行きました。



もともと大好きだから、行こうとは思っていたんだけど、なんちゃって外交と、次のなんちゃって外交の間だから、自分では行くつもりはなかったんですけど、この日に行って大正解!

だって。。。
久しぶりに、鑑賞環境が素晴らしい。。。
つまりは、その時間帯にいらした他の鑑賞者のみなさんの雰囲気がとてもよかったんです。グレコのファンはもとより、鑑賞する事を愛して止まない人達ばかりの、真剣な空気感の中で鑑賞していると、凄く集中できるんですよね。

何が良かったって、それが一番良かったって、同行の皆さんに話したら,
ちょっと失笑だったような気もしますが、鑑賞環境は私にとっては大切なんですよ。

さて、その集中して見たエルグレコ展。普段欧米の美術館でもなかなか見られないようなトレドにある作品が多くて、お初の対面の肖像画や、所蔵していた書物の余白にびっしり書き込まれた建築や絵画に対する見解など、ただの「ギリシャから流れてきた宗教画と肖像画を特徴的な筆致で描いた画家」的なイメージしかなかった私達(いや、私)の目を開かせてくれました。

建築・彫刻・絵画という諸芸術を教会や礼拝堂という神の光に照らされた空間内に全て融合させたという点が重要な新たな気付きです。教会の祭壇衝立の設計を行うなど、建築家としての顔。。。ダ・ヴィンチ程マルチではないにせよ、広範囲に興味を持ち活動していた人なんだ、と知ると益々興味が深くなります。

ダ・ヴィンチの受胎告知の時にも、実際にかかっていた教会で、人々が見上げる位置を計算した上での、描き方をしているので、正面からみるとやたら手が大きいとか、バランスが悪くみえる、との解説があって、目から鱗だったけど、エルグレコの場合も、あの特徴的な細長~ーーい顔や身体は、人びとの目線を計算した上での、意図的な描き方出会ったことを改めて確認しました。なるほど、トレドの教会で見た時は、さほど、違和感を感じなかったわけですわ。

しかし、そうなると、美術館に全てを持ってきてしまって「畏まって」鑑賞というのも、えらく変な目線でみていることになりますねー。特に海外で常設しているところ。。勿体無い掛け方をしている。。
ということになりそうですね。。

さて、ダ・ヴィンチの受胎告知の話に触れたので、受胎告知関連で言うと、グレコの場合も当然、描いているわけですけど、今回の展示で素晴らしかったのは1576年頃に描いたものと約25年後に描いたものが仲良く展示さてていること。






































(左が若いとき、右が25年後)

若いときのは、構図もまぁ、普通といえば比較的普通。ダ・ヴィンチ等で見慣れたガブリエルとマリアの左右の位置は逆だけど、床のタイルのだとか、奥に広がる景色だとか・・まぁ定石なんでしょうか。でも1600年に描かれた(日本は、天下分け目の関が原なんていう時代ですねぇ)受胎告知は。基本構図は変わらないけれど、ぞろぞろ目白押しになって並ぶ天使の顔が天まで昇り、その天界では妙なる音楽を奏でるヒト(神か?天使か?)たちが祝福している感じ。日本の絵巻が横展開の物語だとすると、細長く画面展開するエルグレコは縦展開ですねぇ。。これも、見るヒトの目線を意識しているんでしょうね。。

個人的には天使の顔がずらーーっと並んでるのが。。。実は私よく、ノートの端きれとかに、いたずら書きをするときにこうやって頭ばっかり並べて描いていたことがあって。。。個人的には超受けました。。やっぱ、そうするよねぇ。。と語りかけてしまった。。苦笑。

そのほか、宗教画以外で珍しく女性(内縁の妻説あり)を描いた、「白てんの毛皮をまとう貴婦人」のてんの毛並みの描き方や、ポーセリンのように白く透き通った肌やヴェールの透き通った生地のの描き方に、(普段のイメージとは異なるグレコの絵というだけで)うっとりしてみたり。。。



修道士オルテシオ・フェリス・パラビシーノの肖像↓も二重丸つけてるところみると、ぐっと引き込まれていたんだなぁ。。

楽しまさせていただきました。

2013年1月26日土曜日

【過去日記 2013/1/26】 髙山辰雄・奥田元宋@山種美術館

実は、始まる前はそれほど期待していなかったのだけど、この展覧会は想像以上に素晴らしかったです。

81歳の髙山辰雄さんが、経年により、黒群緑でモノクロでに描いた聖家族は、その意図とおり少し銅色っぽい茶色が周囲に表出、そして辰砂絵具をほぼ透明に近く溶いて人物の周囲に薄く塗ってあるということなのだけど、これが、後光のような効果を生んでいました。

Photo: 山種美術館の高山・奥田展では、高山辰雄の《聖家族》シリーズも明日が見納めです。図版では伝わりにくいのですが、墨ではなく焼いた絵の具による黒色が醸し出す立体感と、高山作品特有の静謐で深い精神性を感じに来てくださいね。(山崎)

眺めれば眺める程、味わい深い。髙山さんはこの変色の効果を見ることは出来なかったでしょうけど、頭の中では、想像できていたと思うと、凄みを感じました。

それと、奥田元宋さんの透明感と奥行、地に丁寧に塗られた金泥の煌めきの効果が素晴らしい絵の数々。
Photo: 奥田元宋《湖畔春耀》(山種美術館蔵)。十和田湖畔の木々の緑と山桜を描いた作品。元宋は自然に接するとまず色が目に入ってくるのだと語っています。この景色も元宋の目にはその色調が「古代裂」のように映ったそうですよ。(山崎)
奥田元宋《湖畔春耀》©山種美術館FBサイトから

この煌めきは写真ではわかんないですよねー。美術館に行く醍醐味ですね。



大画面の奥入瀬渓流の秋と春の絵は、眺めれば眺めるほど奥行と木立の間を駆け抜ける風と水飛沫、水の冷たさが感じられるような臨場感が素晴らしい絵でした。

Photo: 山種美術館の高山・奥田展は明日が最終日。奥田元宋の《奥入瀬》の春と秋が同時に展示されるのは次は何十年後になるかは、全く未定。マイナスイオンたっぷりの6mの大画面2点の迫力をぜひ堪能してくださいね。どうぞお見逃しなく!(山崎)
奥田元宋《奥入瀬》©山種美術館のFBサイトから

歌会の召人にもなられた歌人でもある奥田さんの絵にはどれも、心を奪われました。



会期は27日までなので、私はもう行けないけれど、お時間あったら是非ー♪

【1月26日の過去日記から・・・】