失敗したー。佐久間さん(テレビ東京P)の呟きで見たあとに、ひRさんから二回行ったけど素晴らしかったと聞いて慌ててサイトに行ったのに予約券終了。ちーん。
予約券とれなかったので、覚悟して二時間並んだ。その間救ってくれたのはスマホの向こうにいる友達たち。ありがとう。
そして・・・二時間鑑賞した。
最初はあの前田美波里のポスター・・・・の前にホネケーキのの広告の方が先。
芸大在学中に「デザインとは社会に対するメッセージ」という発言に影響を受けたというだけあって、彼女は単に「お絵かきが巧い」とか「素敵な感覚」があるというだけではないんだな、という事が展覧会を通じて一貫して伝わってくる。
サブタイトルも 血が、汗が、涙がデザインできるか
だもの。
第一章の TIMELESSは 主に資生堂時代、独立してからのPARCOとか角川の仕事が中心だけど 新しいメッセージを持った文化(安っぽい言葉になりがちだけど)の発信を彼女のクリエイティビティで斬新な世界として生み出してたんだなと改めて思う。まだ子供すぎてPARCOがナニであるかとかもわからなかったけど、ポスターの中には見覚えがあるものもあった。TOKYUグループのロゴにも関わってたのね、とか山本海苔店の缶かんにも!とか知らない事ありすぎ(アカデミー賞の衣装のイメージが強かった)。万博のポスターもそうだったんだ・・とか。あとPARCOのメッセージはもう50年近くたとうというのに、未だにジェンダー問題が低レベルすぎる(オリパラの森会長の女性蔑視発言が今炎上のさなかです)という日本がもう一度向き合った方がよくないか?というほどの鋭い、でもユーモアのある言葉で迫ってくることに、今回の展覧会の持つ意味の一部も感じられたな。国籍も性別ももちろん人種も良い作品は軽々と飛び越えてくるんだな、という事、クリエーターのジェンダーは関係ないという事、改めて思いながら展示を見る事になった。
見ながら聞こえてくる彼女のインタビューは切れ切れだったけど、その中で今見ても全然新しいと自賛する言葉があったんだけど、まさにそれね!って思ってしまった。
何しろパワフルだな
あと佐久間さんがラジオで何が衝撃的かという話をしている時にも触れていたけど、実に厳しいやり取りの中でこの完成度の高い作品が生まれていたことね。
そして新入社員とか、臆することなく、クリエーターとして最初に踏み出したときからプロなんだな。びしばし厳しい指定が赤かったり白かったりする読みやすい文字でゲラ刷りに書いてある!衝撃のデビュー作品と言われているホネケーキにナイフで真っ二つにする広告のゲラに! ぴあのレポートの写真にも少し写っているけど(ホネケーキのではないけど)
https://lp.p.pia.jp/shared/cnt-s/cnt-s-11-02_2_0134b8d0-58f3-4913-b691-71111ab58f9a.html
既に頭の中に全体の設計図がきっちりできていて、それと違うものに対しては容赦なく檄を飛ばしてるな!っていうのを感じたわ。
デザインとは社会に対するメッセージという言葉に触発されてデザイナー人生を始めた彼女だけど、既にクリエーターとしての自信に満ち溢れてる。
本当は全部きっちりみたかったけど、会場ひろいのわかってたし、入場制限をしていてもかなり密だし、先に進んだ。
第二章は FEARLESS
自らマンネリズムを廃するべくNYに拠点を移した彼女が 組み始めたのがコッポラとかもうすごいんですけど、個人的にはレニ・リーフェンシュタールに再注目していたという事。ちょうど私がNYで会社のSさんにレニの本を戴いて読んだ頃には東京でレニの展覧会を西武美術館でやっていたと知って、残念だったなという事と、数枚展示されていたヌバの写真の美しさに心奪われた。
マイルスデイビスのTUTU、M・バタフライ、三枝成彰とのコラボCHUSINGURAとか、そうなのか、そういう事なのかと展示をめぐる。MISHIMA 金閣寺を真っ二つにする発想は、ホネケーキにナイフを入れたのと通じるのでは?彼女は二番煎じを嫌うというけど、自分の中の同じようなものの繰り返しはするのかな?とこのあたりから思い始めてきて、衣装に至るとその思いが強くなった。そりゃ、そうだよね、全部全く新しいものはできない。自分の造ってきたものの延長にあるものもどうしてもできる。
でもそれらが間違っているわけでもないし、それも佐久間さんが言ってた事だけど、普通だったら頭おかしいデザインでもグレースジョーンズが纏えば全然違って光輝くわけなんで、そこを見通せるデザイン力というのか俯瞰力がすごいんだろうな。もう、そんな感じ
シルクドソレイユの衣装と白雪姫の衣装が結構気に入ったし、ドラキュラの衣装、どんだけ裾が長いんだよ!っていう衣装を纏った俳優さん重かっただろうな、とか下世話な事を考える。
後、単純に壁いっぱいに落下の王国の映像が延々と流れている部屋。彼女の衣装デザインとは関係ないんだけど真横からみてもよくわかる映像の解像度に時代の先行を感じたりして、変な感情が起きた。
確かに二回行きたくなるわ。ちょっと惜しいことをしたかも。
全体の感想としては、壮大な回顧展ではあるけど、デザイン系の人はお絵かきの人と違って、若いときの作品がピークとは言わないまでも、最初からアクセル全開で、むしろだんだん年を重ねていくと、そういった煌めきのようなものより、扱えるステージが大きくなって、結果として舞台美術のような消えものを含む作品になっていくんだねぇ・・あ、彼女だけかもしれないけれど。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/EikoIshioka_guide.pdf
公式による、展覧会のみどころより
展覧会のみどころ
コラボレーションを通したデザインのプロセスに迫る展示
自叙伝『私デザイン』(※)にも克明に記述されているように、石岡瑛子の仕事は、マイルス・デイヴィス、レニ・リーフェンシュタール、フランシス・フォード・コッポラ、ビョーク、ターセム・シンら名だたる表現者たちとの緊張感に満ちたコラボレーションの連続で生み出されてきたものでもあります。展示では、集団制作の中で個のクリエイティビティをいかに発揮するかに賭けた「石岡瑛子の方法」を、デザインのプロセスを示す膨大な資料とともに紹介し、その秘密に迫ります。※ 講談社 2005年 刊
全世界から集めた壮麗な映画衣装などによる、圧倒的な石岡瑛子デザインの体感
人間の身体の躍動感を根源に宿しつつ、「赤」をキーカラーとし、視覚的なインパクトとエモーションを併せ持つ石岡瑛子の仕事を、現在進行形のクリエーションを体感できる、熱量の高い展覧会として提示します。アカデミー賞を受賞した『ドラキュラ』(1992)や、『落下の王国』(2006)、『白雪姫と鏡の女王』(2012)、オランダ国立オペラ『ニーベルングの指環』(1998-1999)など、ハリウッド・アカデミーをはじめ世界各国のアーカイブから集められた衣装展示も必見です。
Timeless, Original, Revolutionary… 時代を切り拓き、境界を横断していくクリエーションの力
前田美波里を起用したデザイン史の金字塔とも言うべき資生堂のポスター(1966)や、1970-80年代のパルコの広告などの一連の仕事において、石岡瑛子は、解放された女性像を提示し、東洋と世界の諸文化を対照・混合させながら、新しい時代を切り拓いていきました。1980年に海外に拠点を移してからは、「サバイブ」を口癖に困難に立ち向かい、あらゆるデザイン領域に挑戦していきます。「Timeless, Original, Revolutionary」の3つのテーマをデザインの根幹に掲げ、「私」の可能性を拡張し続けた石岡瑛子の仕事は、2020年の現在を生きる私たちに力強いメッセージを投げかけるはずです。
石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか
東京都現代美術館2020.11.14- 2021.2.14