2014年6月25日水曜日

《台北「國立(こくりつ)」故宮博物院》 神品至宝展 やっぱすごいわ。。

 

台湾の國立故宮博物院に行ったのは1980年代の半ばだから今か30年位前にもなるんですねー、遥か昔過ぎて、そして広すぎて、疲れすぎて、何を見たのか殆ど覚えていないんですよねー。
唯一鮮明に覚えているのは象牙の細工された玉の中に入り子のようにいくつもいくつも入っていて、でもどこで閉じたのかがわからない。。。まことに不思議な凄い作品な訳で。。。
 
 
不思議というか凄いと言えば、194749年頃の中国国内での国共内戦(蒋介石率いる南京国民政府と毛沢東率いる中国共産党軍の覇権をめぐる内戦)の敗色濃厚となった際に、これだけ大量の貴重な美術品を北京から広州→重慶→成都→台湾に運んだ事ですよ。(と、私は聞かされておりました。)選りすぐったものだけを台湾に運んでいるから北京の故宮博物院には残っていない、という話を昔は聞いたものだけど、実際《清明上河図》を始め200点ばかりが来日した時は、そんなことないじゃん!と思わされるだけの優品が多かったわけで、今回ほぼ粗忘れてしまっている私にしてみれば、それを上回る作品たちに会える機会を逃すわけにはいきませんですよね。。。
 
が、しかーし、ここで一つの問題が・・・
この台北國立故宮博物院の表記を巡って政治問題の陰が落ち。。。
開催が危ぶまれるまでに至ったのは誠に遺憾でありまする。
政治的配慮で国として台湾を認めることができない問題と、固有名詞として「國立」が台北の故宮博物院の名称が入っている事を同列に議論しないでほしいなー。
ま、事なきを得たようなので、ほっとしましたが・・

もーーー!!
 
しかし、先日のキトラの事を考えると限定公開の翡翠でできた白菜を見る為には早めに行かねば。。。そうだ二日目の25日は予定がないからこの日にしよう・・・と思っていたらヴァロットン展のブロガー内覧会のお知らせが・・・うーん、それじゃ、当ったら金曜の夜ね・・・と取らぬ狸の皮算用をしていたのですが、残念月曜になっても当選通知は来ず。。
涙。
 
でもね、それが正解だったかもしれない。まだ夜間開館延長が浸透していないせいなのか、昼は170分待ちで諦めたという友達のレポートを見てドキドキしていた割に、丁度切れていた年パスを買い直し、入館した18時頃で10分待ち、いや実際は映像を二回みられなかったのだから5分くらい?しか待たないのに「お待たせしました」と深々と頭を下げてくださる係の方に促されて、先ずは真近だけど動きながら見なくてはならないインナーサークルに。。
開催前の内覧会に行った知り合いから第五室の中で一作品だけ宝石のように飾られていると聞いていた通り、ライトに照らされた白菜、正式には《翆玉白菜》清時代18-19世紀・・・煌めいていますね。・・・
 
というか、思ったよりも小ぶりで、白菜の厚みは薄い。そして白の部分と深い緑、淡い緑のグラデーションの美しい白菜は純潔と多産(イナゴ)を象徴するということで婚礼道具として持って行ったという皇妃が同じように華奢で優美で美しい人なのではないかと思ってしまうような女性的なフォルムと瑞々しさを魅せてくれていました。イナゴとカマキリは殆ど白菜の葉の色に同化しているので、近くでみてもなかなか認識がしにくいのだけど、細かい造作をじっくり短眼鏡で見る為に、今度は立ち止まっていい方のアウターサークルへ。
 
おしむらくは、白菜の頭の部分の中心が一番濃い緑という部分が、私の背丈では見る事が出来なかったこと。もう少し、低めに展示してくれると虫たちも含め良く見られたかもしれないんだけどなぁーー。
ま、でも行列しているときに見せてくれるビデオで言うとおり、白菜の外の葉っぱの白い部分から透けて見える内側の緑色等、この間の三井で見た安藤緑山の超絶技巧《竹の子》よりはるかに凄いのではないか・・・??(いやそもそも、翡翠の玉と象牙とどっちが硬くてどっちが難しいのかすら技術的にはわかりませんが)と思わされるような素晴らしい「神品」である事を確認させてもらいました。こんなに素晴らしいのに覚えていないなんて、きっと展示されてなかったのよね?と自分を慰めつつ、じっくり対面できたことに満足。
平成館に移り、残りの「神品」たちにもお目にかかりました。
解説によれば、こちらの収蔵品は宋(北宋・南宋)・元・明・清を中心にした70万件。70万っすよ、それを戦火を逃れる為に大八車みたいなのに積んで流々転々としたと想像するだけで圧倒されるわけで。。
今回の展示の解説は中国と皇帝たちの歴史を再確認したり、不勉強な部分を補う(こっちの方が圧倒的に多い)という意味でも分かりやすく、貴重な展覧会でした。
 
1  中国皇帝コレクションの淵源―礼のはじまり
今や「礼」は日本のモノのように思いがち(私だけ?)ですけど、そもそも古代の王侯は青銅器によって祖先を祀り「礼」という制度に整備されたんですって。皇帝たちは青銅器を文明の象徴として「尊」で様々な文物を蒐集、それが皇帝コレクションとして形成され、君権の正統性を象徴する特別な意味を与えられていたそうです。それを示す教本のような《周礼注疏》(南宋時代)も展示されていましたが、いかんせん読めないのがつらい。
あとね、古代の作例に倣った作品を作らせると言う事を皇帝たちが行っていたようで、最初の部屋で出てくる古代(戦国時代―前2-3世紀)の動物型の青銅器《犠尊》、これカバみたいな(隣にいた人は豚みたい・・と言ってたなぁ、犬にも見える)ぷっくり横に広がった胴体と愛嬌のあるお顔をした酒器(そもそも「尊」が酒器でしたよね、)なんだけど、背中から酒を入れてそのカバだか豚だか犬の口から注ぎだすなかなかの優品。同種の青銅器が古代の文献『周礼』や北宋皇帝コレクションカタログ『宣和(せんな)博古図』にも載っているそう。これ、形も愛らしいのだけど、胴体一面に彫り物のように柄が施されていて、とても美しいの。
同じケースの隣には、その古代の作例に倣った元~明時代に造られたという銅器の《犠尊》が、あたのだけど、戦国時代のに比べると大らかさが消えているなぁー。彫り物部分もかなりはっしょっちゃってるし。。これで「倣古」といえるんか?
それはさておき、古代の文物収集とともに倣古を作り出していったことは古代の伝統を復活させることで中華の正統な皇帝であることを示す為って。。。なんか、最近も似たようなことしてるよね、、あの国の指導者は・・・(イヤタイリクノホウノハナシデスガ)
 
2 徽宗コレクション―東洋のルネサンス
北京の方の展覧会(2012年ーーまだ感想アップしてないのよねぇ)の時も痩金体の美しさにウットリさせられた徽宗皇帝(北宋)の時代に「雨上がりの空のように白みがかった優美な色」を特徴とすう汝窯(じょよう)という窯で作られた作品《青磁輪花碗》のケースが第二章のスタートです。
汝窯で作られた磁器で現存する70点のうち21点も有すのが台北の故宮。この汝窯の秘色青磁が後代でも理想とされたとか。
たしかに縹色(はなだいろ)の美しい色合い、キレイな貫入のある《青磁円洗》ステキー♪
そしてお待ちかね、徽宗帝の美しい痩金体《楷書牡丹詩帖頁》、絵画もよくした彼の《渓山秋色図軸》も悪くない。

3 北宋士大夫の書―形を超えた魅力
歴史では習ったはずだけど、忘れてましたね。唐の時代は役人は世襲制、しかし宋の時代は科挙に合格しながらも、儒教的学問と教養を身に着け隠遁者のような生活をしながら絵を描き(文人画)。。という人たちのことなんですね。
なんか、今の国にはそんな人いるんだろうか?と思ってしまうけど、猛勉強をし教養を身につければ身に着けるほど、浮世の世界の虚しさなどを感じていたんでしょうかねー。
それはさておき、美しい書が並んでいたのだと思うのだけど、判断能力なし。
あ、米芾(べいふつ)と言う人は知ってるよ。。な感じ。

4 南宋宮廷文化のかがやき―永遠の古典
北半分を「金」に占領されて北宋は杭州に都を移し南宋となり、そこで宮廷絵画や磁器などの伝統文化を継承しながら、さらに洗練度を増していくわけですね。北宋に倣い青磁を作らせもした。
例えば、《青磁輪花鉢》白濁した淡青色の釉が美しーーーい!口縁は釉が薄く素地が透けて細く削られた高台たたみ付は露胎で黒色を呈する所謂「紫口鉄足」を有する・・・・・と解説にはありましたが、ただただ美しい。。としか私には表現できないな。

文字の方も・・・徽宗帝の第九子高宗による《行書千字文冊》
王義之を習いこんだというその文字は美しい筆致。
高宗は書画の鑑識に詳しい文人でもあったようです。 

その他蓮の枯葉を象った玉器、手に収まりがよさそうで品がいいなあ。泥の中にあっても汚れない蓮は文人には人気のデザインだったそうで。。

あと、《明皇幸蜀図軸》は唐時代のものですが、当時の山水画は顔料を多用した「青緑山水」方式。結構大きな画面のこれらの色付き現存作品は世界に十指に満たないそうです。
その後水墨画を描き始めたのは五代北宋初期。逆に青緑山水は、当時の遣唐使が持ち帰ったのでしょうね、日本に伝来して、「やまと絵」になり今日の「日本画」の源流となったというわけのようで。。

5 元代文人の書画―理想の文人
 飛び切り美しい文字が並ぶ《行書間居賦巻》が印象的な趙孟賦は南宋の皇室末裔ながら心ならずも元に仕えた人。そんな苦しい心もちでありながら復古主義を掲げて伝統的な書画を見事に復活させたとか自ら仕官を拒否した士大夫の書画に孤高の精神を盛り込み理想の文人とされたとか。名前くらいは知っていたけど、改めて解説読むとふむふむ、っていう感じですね。

同じ趙孟賦の《調良図頁》は白描画。白描画は何も装飾や技巧を好まない文人たちに好まれたそうで。平安の頃の日本の白描画はどうだったんだろう。もっと優美やデザイン的なイメージがある私にはその後の日本でも好まれた文人画の人たちがどう思っていたのか気になるところですねぇ。

こちらのセクションには元末四大家と呼ばれる倪賛、黄望、呉鎮、王蒙のうち3人の作品があってもっとじっくり見たかったんだけど、まだ第二会場にも達していないのに、あと40分くらいしか残っていないという現実におののいて、このあたりから集中力が落ちていましたね。趙孟賦夫人の菅道昇が描かれていた《元人集錦巻》なんかじっくり見たかったんだけどなー。後期にしか見られない赤壁図もあるから、もう一度行かないとあかんな。

6 中国工芸の精華―天と人との競合


残された鑑賞時間が短くなったものの、ここからが凄かったんですよね。いやー三井の超絶技巧、去年の竹内栖鳳展でも感動した刺繍の作品群が凄い。どれも凄いのでもっとみていたかったー。
それと漆芸が凄いのです。時間の関係でじっくり見られなかったけど、一見しても《八宝文堆朱方勝形箱》など美しいの一言。《五穀豊登図存星長方合子》はこの間根津で見た存星の作品より格段に凄い(ゴメンナサイ)。《梅花彫彩漆輪花合子》も素晴らしい。
百科事典の《永楽大典(梅)》《永楽大典(游)》は字も絵もきれいだし。。
キレイさといえば《妙法蓮華経》。平家納経のように紺地に菌の文字がまためちゃくちゃ美しい。

この先にはあと4章あるんですよ。でも、落ち着いて見なかったので、次回行った時に感想書き足すかな。。



特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」
平成館 特別展示室/本館 特別5室  2014年6月24日(火) ~ 2014年9月15日(月)
《翠玉白菜》は7月7日まで!
東京国立博物館
 


 

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