2006年11月10日金曜日

【過去日記 2006/11/10】 再び 「仏像 一木にこめられた祈り」 


再び、東京国立(こくりつ)博物館で開催中の仏像~一木にこめられた祈り展に出かけました。 
今週から後期に入っていて、寺を離れた場所で公開されるのは初めて!という滋賀・向源寺(こうげんじ)の「国宝十一面観音菩薩立像(渡岸寺(どうがんじ)観音堂所在)」が拝めるからなのですぅ。 
その姿の美しさから白洲正子、井上靖、土門拳、水上勉といった昭和を代表する(!?)文化人達の心を奪って止まない、というのですから、見なきゃ損、損?! 

絵画も同じだけど、仏像、彫像全て実物は、写真では及ばない迫力や美しさというものに触れることができるなぁ、というのが、実感。http://event.yomiuri.co.jp/2006/butsuzo/ 
http://event.yomiuri.co.jp/2006/butsuzo/kannon.htm 
この国宝十一面観音菩薩立像が普通の十一面観音像と大きく違う特徴、暴悪大笑相を除いた変化面全てが正面に位置し、慈愛に溢れた菩薩の顔を取り巻く妙、そして裏側の暴悪大笑相だけが菩薩の後頭部に突き刺さるように配置されている異形は見る者に強い印象を与えます。
 

もちろん前期だけにしか公開されなかった「国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音・京都・宝菩提院願徳寺蔵)」も、切れ長できりりとした目や流れるような天衣の襞が実に典雅な美しさを湛えていて、また襞の隙間から台座蓮弁が透けて見えるような工夫がある為360度いずれの角度からも、違った美しさを堪能できました。 

人によっては、寺で置かれているようにほの暗い庫裏と同じ環境で見るべきという意見もあるかもしれないけれど、こうやって、仏像の裏面に廻ってみれば、細心の心配りや、仏師の企図した心の理解の助けとできるのも、こういった企画ならではの至福です。 

偶然出会った知人は向源寺で十一面観音像を拝観したものの、白洲正子が訪ねていた時代とは違い裏面が見えなかったので、今日初めて全方位から拝むことができた、と言っていました。 

サブタイトルとなっていた、「一木にこめられた祈り」が円空・木喰作品に至る全作品からしみじみと伝わる本当に良い展覧会でした。 

。。。と言葉遣いまで丁寧になってしまった。。 

おまけ 
いつか、後で書くよん、と言っていたその他の上野周辺の企画展の感想を手短に。。(と言う割に長かったな。。) 
① ベルギー王立美術館展   
国立西洋美術館の入り口にこの展覧会の3枚の目玉作品の大看板が掲げてあります。。 
時間のない人は通りがかったときに眺めていってください。。って感じかなー。それぞれは素晴らしいですよ、勿論。その他はオヴィディウスの転身物語を熟読してから行かないと楽しめないのかも。。個人的にはルーベンスの「聖ベネディクトゥスの奇跡」がなかなかよかったけれど。。横にこれを模したドラクロアの同じサイズの作品がありますが、断然ルーベンスです。。 


② 大エルミタージュ美術館展 
  300万点の所蔵品のうち絵画だけでも17千点もコレクションしているエルミタージュの油彩画の中から「都市と自然と人びと」をテーマにした80点。ベルギー王立美術館展と違って目玉作品はないものの、実力派ぞろいと言ったところか、地味ながら見ごたえがあった。惜しむらくはエカテリーナの秘めた恋などに焦点を当て「イタイ」と評された山口智子の事前宣伝番組が展覧会のテーマを散漫にしたことかもね。でも、行けば良品に出会えます。。  

③ ダリ回顧展 
 逆にメディア戦略として商業的成功を収めたのが、こちら。。シュールレアリズムもダリにも縁遠かったかもしれない人も集めて大盛況。。でも「十重二重(とえふたえ)」とはこのことか、という環境に置かれると、「見た気」もしないし、2度と展覧会なんて来たくなくなるのではないかなー、という逆効果ばかりが心配になってしまいましたよ。。ま、こちらも、行ったのが日曜朝一番という最悪の時間帯を選んだせいでもあるんだけど。。 

展示作品はフロリダとフィゲラスの両ダリ美術館からの逸品を集めているので、好きなら垂涎モノかもしれないけれど、シュールな絵はわからん、という人には???でしょうかね。。個人的には少年時代に描いたという「魔女のサルダーナ」、見た瞬間に「えーっつ」って思っちゃった。マティスの「ダンス」の構図そっくり。。音声ガイドでもダリはマティスのダンスの絵を見たことがあるのではないか、と解説していましたが。。 


以下追加 as of 2013/2/10
ちなみに、ダンスのエルミタージュ版は↓(photo by Rose Wine all rights reserved)

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