2013年7月15日月曜日

【遅ればせながら・・】ふんわりとウキウキ浮世をたのしみませう。浮世絵フローティングワールドー珠玉の斎藤コレクション@三菱一号館美術館。。のブロガー内覧会レポと第一期の感想文

いや、うかうかしているうちに第一期が終わってしまいました。
ブロガー内覧会にお伺いしたのは6月25日だったのですが、直後になんちゃって外交第一弾、一瞬帰ってきて、プーシキン美術館展の内覧会(あーこれも書かないと!)にも行かせて頂いて、第二弾、戻ってきたら15日で展示期間終了の展覧会を弾丸見学ー!みたいな事をやって、15日の第一期終了時間の1時間半前に、もう一度お伺いすることができた・・・というわけであります。

いや、内覧会の時は写真撮ったり(一点撮りも含め撮影は主催者のご了解を得ています)するだけで時間が終わってしまい、一枚一枚をじっくり鑑賞した気持ちになれなかったし、音声ガイド聞けなかったし。。。

・・・言い訳はこれくらいにして。
当日はツイッターでのつぶやきはしてあるので、とりあえず、最低限のミッションはコンプリーテッド!(ナハズ)

再録すると・・・
はい、今日も内覧会 #三菱浮世絵 珍しく床に座布団敷いて聴くの。 で富士山世界遺産登録にぴったりな富嶽三十六景お土産も売ってるらしい。 pic.twitter.com/F3IczkfQH3posted at 18:31:43
そう、この日の内覧会は、肉筆浮世絵の展示されている部屋に簡易の座布団を敷いた上に座らせてもらって、学芸員の野口さんと企画してくださった「青い日記帳」ブログの中村さんやミュージアムショップの企画をされていた方のお話を伺った上で、鑑賞をするというスケジュールでした。

野口学芸員さんのの説明では
①タイトルについて・・・Floating World は日本語に訳すと「浮世」ですよね。Ukiyo-eが固有名詞になる前のムカシはまさにFloating Worldと直訳されていたとか。そして「ふんわりと」浮いた感じも表現したかったと。
②何故西洋画の美術館と思われ(がちな)ている三菱一号館で浮世絵なのか・・・いやいや、印象派などの近代絵画の発展に力を貸したのはまさに浮世絵。ジャポネスクが流行り、ゴッホが広重や英泉の模写をし、マネの《エミール・ゾラの肖像》の背景には浮世絵と西洋画が両方架かっている。
つまり西洋の家に(西洋)額装した浮世絵が西洋画と共に架けられていた。
三菱一号館はジョサイア・コンドル(ニコライ堂とか旧岩崎邸とかを設計建築)が19世紀に設計した建物を忠実に再現しているので、西洋人が建てた建物の中で西洋人が愉しんだような環境で鑑賞ができる。しかも、同美術館はロートレックなどの版画を所蔵しており、西洋の版画と日本の版画=浮世絵を並べて見たい、それが合うのか合わないのか、勝つのか勝たぬのか、響きあうのか合わないのか、ノリで選んだということもあるけれど他の美術館ではできない(洋館の中で洋版画とあわせてみる)展示をして見たかった、と。
西洋美術の美術館というイメージが一般的かもしれないけれど、その西洋の画家に影響を与えた浮世絵の展覧会を行うのは自然なこと、第一、こんな組み合わせ、今回のような企画でなければ出会えませんよね #三菱浮世絵 pic.twitter.com/ZYcBMfpvvJ posted at 20:20:26 
これは写楽《伊達与作》と
ウジューヌ・フラッセという人の
《硫酸魔》の組合せ・・・
硫酸魔って・・・(汗)、オソロシイ
が、しかし、フシギと良く合う。。

③肉筆浮世絵を通常天目茶碗等を展示するようなケースの中にいれ床の間に飾ってあるような感
じに展示し、更に展示室の中に一点一点のケースを点々と置き、まるで江戸時代の人ごみの中に『紛れ込んだ』感じのように演出。

#三菱浮世絵 江戸の街にタイムスリップする感覚を狙った展示。狙いはともかく、肉筆浮世絵の軸が目線にあるって最高な環境、ついつい長居したら最後は駆け足になってしまった。もっとじっくり見たい! pic.twitter.com/aPM7G6wyBB
posted at 20:26:17 

実はもう一度行って見たときに気付いたのですが、→この向きではなく、この手前の二枚の肉筆浮世絵の飾られたケースとケースの間に立つと、奥のほうの壁に架かった、西洋画風に奥行きのある描き方=透視図法っていうんでしたっけね、←作者不詳の《吉原賑之図》が見えるんですね。
更に江戸の街が遠くまで続き、吉原大門を通りぬけて・・・と。
なかなかニクイ演出だわ。

④元参議院議員の斎藤文夫氏(現在 コレクションを保有する川崎の砂子の里資料館館長)が50年余かけ、個人で収集した4,000点とも6,000点とも言われる(組み物の数え方次第で点数が変わるそうで・・・)膨大、且つレアなコレクションを3会期合わせ500点超に絞込み優品を展示。会期ごとに全て架け替え。早くから一般にも公開するなどされていたとはいえ、勿論知りませんでした。ものすごい数ですよね。

鳥居清長 《江之嶋》
鳥居清長《江之嶋の渡し》
天明年間のこの頃は肩車されて渡ったんですねぇ。
なんかちょっと恥ずかしかったんじゃないかなぁ。
なんでも、この方、最初(50年ほど前)はお住まいの川崎と神奈川に因んだ浮世絵を集め始めたそうだけど、病膏肓に入り、次第に江ノ島、鎌倉と版図を広げ、ついには時代毎、ジャンル毎といったように系統だって蒐集するに至ったそうです。


今回はそのエッセンンスのみだそうだけど、いずれも品が良く、幕末の血みどろの作品であるとか春画とかはコレクションにはないそうです。(春画は高橋館長が是非並べたかったといわれていたそうなんですが、育ち盛りの息子さんの教育の為蒐集しないというのが奥様との蒐集にあたっての約束を守られたそうです。・・・ま、口吸いとか女湯みたいな浮世絵はありましたがね。)


でもコレクター魂を揺さぶる「(世界で現存するのは)一点(だけの)もの」であるとか「揃い」の画帖であるとかをお持ちです。
例えば、鈴木春信の《風流やつし七小町》シリーズの七点は揃っているのは珍しい・・確か斎藤コレクションだけ。

春信は浮世絵の始まりといわれた紅摺絵の時代から木版多色摺りの錦絵に変わっていく時代の立役者で「○○やつし」といった、シリーズを手がけています。
そのひとつが小野小町のエピソードを当世風(といっても、勿論宝暦年間の当世ですね)にやつして表現したこの七小町シリーズ。

鈴木春信《風流やつし七小町 草紙あらひ》丁度根津美術館で同じエピソード=草紙洗いの浮世絵を拝見しましたが、こちらより直接的。こちらの方は知識がないとなかなかそれとわかりませんね。(汗)
 このほかにも第一期だけでも歌麿の《青楼十二時 続(せいろうじゅうにとき つづき)》シリーズの12枚セット、
喜多川歌麿《青楼十二時(じゅうにとき)続(つづき)》
続とはシリーズの事。一部はみたことがあるけれど
並んで飾られているのはみたことなかったのかー。









この午の刻なんて、客から来た手紙を
横目でみながら一服してるわ。太夫大忙し!










そしてこの《青楼十二時 続》の反対側には三菱一号館が誇るロートレックの版画作品群の中でも、いかにも西洋の女(道化師)らしく黒い絹のストッキング穿いた足をひらいたアンニュイな女性の版画と髪を梳く女の版画が飾られているところがニクイですね。
ロートレックの版画が
青楼十二時の向かい側の壁に


レアものは第一期だけでも他に沢山あります。
例えば、
《女織蚕手業草(じょしょくかいこでわざぐさ)》の12枚並べて作業の流れを洛中洛外図屏風に使われるような雲でつないであるもの↓


喜多川歌麿《女織蚕手業草》
右から左に蚕を育て機織にかけて反物ができるまでを
12枚並べると絵巻物のようになるという仕掛け。
その隣には世界で一枚しか現存しない《恵比須講》などなど。見たことのない浮世絵も多く登場します。
扇面に描かれたような勝川春章描くところの《東扇(あずまおおぎ) 初代中村富十郎の娘道成寺》は特に紫の色が良く残った優品の上、一枚しかないとのことですが、その意匠も含めきわめて印象的な絵柄ですよね、ほんと。


④会期は3期に分けて全て展示替え。でも図録は勿論3期分一緒。この図録の表紙もちゃーんと考えられています。この両国の花火(が水面に反映してますね)を愉しむべく、屋形船のへりに座った女性の後姿(珊瑚玉の簪を一本丸髷に挿していて、高田郁の「澪つくし料理帖」に出てくる御寮さんを想像してしまいますが。。)を描いた浮世絵の作者である小林清親は

図録の表表紙 第三期に展示される小林清親の
《両国花火》は広重の《両国花火》へのオマージュ

有名な初代広重の
《名所江戸百景 両国花火》も第三期に登場
こちらは二代広重の
《江戸名勝図絵 両国橋》
タイトルこそ花火ではないけれど
三枚同時に見られるのが楽しみです
広重に憬れ、名所江戸百景の《両国花火》←を参考にして制作したそうです。
うつりゆく江戸から東京がテーマの第三期に登場するそうですが、近代から江戸を回顧するというこの夏に開催されるこの展覧会を象徴するという意味で選ばれたそう。
細かいところにも配慮されているんですね。図録には協力者として今をときめく奈良美智とか会田誠などなどのアーティストの名前が並んでいましたけど、どういうところでご協力されたんでしょうかねぇ。。


⑤今回の目玉は展示だけではありません。実は売店にも力が入っているそうです。まずは、壁の色にご注目。
ジヴェルニーのモネの家の壁のようなレモンイエローの壁・・・に掛かった浮世絵は現在日本で唯一手刷りをしている版画制作の職人たちの手になる復刻浮世絵を手がけるアダチ版画研究所によるもの。モネの頃、本邦では勿論、浮世絵を額にいれて飾るなんてことはしていないわけですが、そんな感じにしていますね。
勿論ジヴェルニーの日焼けして退色したほんものの浮世絵よりも復刻版が遥かに美しいことも請け合いということでしょうね。
そして物販についても「売れないものもうるのが美術館のショップ」といいつつ、ホンモノを追求。
第二期のテーマが旅の絵ということもあり、東海道53次の宿場の時代から今に至るまで続く老舗のもの。
例えば日本橋にちなんでかつおぶしの「にんべん」の高級かつおぶし・・・削り器も含め置いているそうですが、「にんべん」の方も、まさか売れるとは思っていなかったのに、早速買う人がいたとか。
団扇にしても江戸時代から続く版元さんのもの、手ぬぐいや和紙も1600年代から続く老舗のもの、つまりはホンモノを置いているということ、
江尻の宿の「追分羊羹」さんの蒸し羊羹も、江戸時代の製法になるもので、消費期限が限られているので、滅多に手に入らないとか・・・それを聞くと買わずばいられまい。。

いやー、説明だけでもこんなに紙幅を使ってしまったけれども、私的にツボだった作品たちをささっと紹介しておきたいと思います。

まず最初の部屋『浮世絵の誕生』の壁に掛かっていた菱川師宣の白黒の切り絵のように見える墨摺絵《韃靼人・・・・図》。・・・の部分は《狩猟》だったり、《休息》だったりして、何故これを描いたのかはわからないけれど、兎に角よくかけている。。

その後に紅摺絵と言われる初期の浮世絵が並びます。いずれも良くみると、既に高度な技術だし、絵も上手。でも私が気になったのは三幅対の右となっている《みやこのもみじ》。
《みやこのもみじ》いや、背景は桜だと思うのだけど。。。
紅葉といいつつ、背景は桜と思われ。。。残りの二幅のいずれかは紅葉だったんだろうか。。などなど。。どうでもいいことなのに、ひっかかってしまいました。
《二代目坂東彦三郎》

もう一枚紅摺絵の中で私の心を捉えたのは初代鳥居清満の《二代目坂東彦三郎》
赤と緑が色濃く残っていて、印象的でしたねぇ。

春信の○○やつしのうち風流七小町やつしシリーズについては書きましたが、そのほかにも色々なやつしもの。これがまたすぐに見て理解できないのが口惜しい。残念ながら図録も主要作品の解説しかないので、何になぞらえているのかがわからないのでした。(涙)

春画はないというけれど、春信の《菊見の男女》や《風流浮世寄華 新枕 初開梅》なんかは非常にエロティック、文字の並びだけでもね。

その後に続く磯田湖龍斎の作品群はふくよかな顔とボリュームのある花魁が登場したりして、100種を超えるシリーズとなる「ファッション雑誌」のような人気があったと聞くと、確かに着物の柄だとか、髪型のお手本としての浮世絵のあり方というのが、よくわかって面白い感じ。
でも、この人、《雉と牡丹》という作品は対象が人じゃないせいか、色が退色しているだけの理由ではなく、イマイチ。ところが図録だと、丁度ジョルジュ・マンザナ・ピサロの白黒版画《いたずら七面鳥》と並べてあり、意外に映えている。なるほど。
現場ではマントルピースの上に《いたずら七面鳥》がぽつんとあった印象なので、あまり対比して考えられなかったのだけど。。。取り合わせの妙ですね。

さて、気になったといえば、あの江戸の町をぶらぶらと歩く趣向の「肉筆浮世絵」コーナー。
肉筆画はいわば注文制作という高級品だけに普段(図録では絶対味わえない)掛け軸の表装の美しさもすばらしいものが多く、うっとりしてしまいます。
特に右側の最初の陳列ケースにあった懐月堂度繁の《美人立姿図》は着物の縁の墨線が太く、着物の色も赤のグラデーション、そして姿もゆるいCの字型と、目を引く上、囲んでいる中廻しとか中縁(へり)と言われる部分の大胆な刺繍が目立ったので、印象が強くなりました。隣にあった同じく懐月堂派の《美人立ち姿図》も金地の美しい裂に囲まれていて美人が際立ちますよね。
懐月堂度繁《美人立姿図》中縁が大胆

懐月堂派の《美人立姿図》


























さて、美人といえば、歌麿の美人画で有名な「高島おひさ」と「難波屋おきた」。さすが美人だけあって、初代歌川豊国や栄松斎長喜といった人たちによっても描かれていたわけなんですね。歌麿と並べて展示してほしかったなぁ。。ということで、東洋文庫の展覧会の時の図録のおひさと勝手に並べてみました♪同じ向きだけど、趣は大分違いますね。歌麿の構図取りの素晴らしさと当時からの人気の高さが良くわかります。
こちら栄松斎長喜のおひさ
イケメンの団扇なんか
持っちゃって、あだっぽい
でも歌麿のと比較すると小娘っぽい


こちらが初代豊国のおひさ、
美人なんだけど、ただそれだけ?
って感じでモッタイナイ
歌麿のおひさ(部分)@東洋文庫 
プロマイドとしての価値が
高いのもむべからぬかな

















比較といえば最後の部屋に出てくる豊国の《浮絵忠臣蔵》と北斎の《新版浮絵忠臣蔵》の同じ段(場面)を上下に並べていたのが面白かったなぁ。これはどちらが素晴らしいということではなく、それぞれに味があって良かった。
ただ、クライマックスの夜討ちを描いた十一段目に関しては、横の壁に国芳による極めて異国情緒の強いモノクロの(ソレコソ)浮絵や、先日根津で見て強い印象の残った同じ十一段目をダイナミックに描く豊春の《新版浮絵忠臣蔵夜打之図》と比較すると大人しかったかもしれないなぁ。

上段が北斎で下段が豊国
同じ段を描いている






ジャカルタの領主館をモデルに(何故?)
十一段目を描いたという国芳、
犬に餌を与えてほえさせないようにしている
義士の姿を描くなんて、いかにも国芳らしいような。。
にしてもフシギは静寂感が良く伝わってきますね。

北斎の十一段目

豊国の十一段目
さて、ささっと書くといった割りには長々書いてきましたが、第一期の最後の部屋でもう一枚強い印象を残してくれたのが、コレ。初代豊国による《両国花火図》 少しでもいい位置で花火を鑑賞しようと人々がわんさか集まって、打ち上げられた花火にどよめく姿は、今もムカシも変わりませんね。


いやー、楽しかった。第二期も行こう♪→早速イッテキマシタ、レポハイツニナルノヤラ。


浮世絵Floating World-珠玉の斎藤コレクション展
三菱一号館美術館
第一期 浮世絵の黄金期 江戸のグラビア    6月22日(火)~7月15日(月・祝) 終了
第二期 北斎・広重の登場 ツーリズムの発展  7月17日(水)~8月11日(日)
第三期 うつりゆく江戸から東京 ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線
                              8月13日(火)~9月8日(日)





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