2013年2月28日木曜日

オリエント急行殺人事件と出光美術館のフシギなつながり? 出光美術館



人類の黎明となる文化文明の起源の地、中東。発掘をされることで有名な学者殿は知っていても、大英博物館やルーブル、メトロポリタンといった海外の美術館博物館のように大々的なコーナーのあるところはないよね、って思ってましたよ。

そもそも、エジプト美術だけでも、先ずは英国がやってきてめぼしいミイラをかき集め、ナポレオンの遠征に伴って発掘されたものがルーブルに行き、相当カスカスになったところで、最後にアメリカが金の力に物言わせて調査団を送り込んで発掘しきれいさっぱりもって行った。。。んじゃないか?と思うほどの質量ですからね、一般公開してくれる範囲だけでいうと。

カイロのエジプト考古学博物館なんかツタンカーメンの黄金のマスクとラムセス二世のミイラ以外は数が多いといっても、見せ方の面白くなさのせいも手伝って、あんまり印象に残らない(でも展示の部屋数は多かったー。疲。)

それに引き替え、遠く離れたニッポンでは松岡美術館とかの隅っこのほうににちょこっととか、あるけど、日本にはさほど大きなコレクションを持っているところはないでしょうねー、と思っていました。量という意味では正解、でも質という意味ではなかなかのコレクションを持っているところがあったんですねー。それが出光。

出光と中近東美術との関係は、この展覧会のきっかけとなった中近東文化センターhttp://www.meccj.or.jp/Pages/main_frame.html
に触れられていますが、何はともあれ、とにかく紀元前の出土品は出色でとても愛らしいハートの顔をした女性の土偶やトナカイを連想させるような赤鹿の形状をした水注(紀元前6-10世紀頃!!)、朱鷺(アフリカクロトキ)のミイラや、その形状を模した置き物等、その品物が紀元前10世紀である等とのラベルを見る前に、「美しい!」と感嘆できる作品が多いのです。勿論ラベルみて、その古さに比した高い技術に更にびっくりする、という仕掛けです

唯一、つっこみを入れたくなっちゃったのは、一番最初に展示されていた山羊疾走の土器。うーーん。二重丸を書き連ねたような文様は文様としては美しいけれど、これを山羊の疾走というには無理があるんじゃね?しかも紀元前5世紀。時代が古いからといって、デザインや技術が稚拙だとは限らないという事は、すぐ近くにある、山羊のデザイン(これは見るからに山羊とわかるデザイン性の高い器を見ると思う事です。この山羊の下にはボーリングのストライクマークのような文様と縦線の文様が連続していて、現在に通じる優れたデザインですが、確かに100年程度違うけど、こちらの紀元前4世紀でこれだけはっきりとした「絵」が描かれているのに、何故何故?

そうそう、サイトにも載っている金製高坏もそのデザインが美しくつっこみいれた土器のデザインに似た(似て非なるなんだが)イメージを与えてくれるけど、それも紀元前10-6世紀だということで。。よくこれだけの保存状態と質の高いものが手に入ったなぁと感心してしまいます。

面白かったのは給与の支払い記録。支払は基本的に現物で通常大麦だけど、この記録ではビールとパンの記載があるんですって。支払先も代官、兵士、伝令、儀式の歌い手、献酌官等、当時の官吏の仕事内容が想像できる・・・って、研究者もすごいですよねぇ。。

こんなマメ知識トピックスが展示されているわけですが、その中にタイトルにしたクリスティーの事が書かれていたわけです

アガサ・クリスティーは中近東に一人旅して、そこで知り合ったマックス・マロワンさんという考古学者と再婚しているのですが(再婚とか一人旅のことは書いてありませんでした、念のため)、その考古学者仲間の人たちによる発掘されたモノとの関係があるという訳ですね。仲間の関係者の中にはアラビアのロレンスも登場するし、好きな人にはたまらない食いつき話題です。はい。

さて、第二部は吹きガラスの技術が向上した頃からのローマ時代の作品が並びます。実用には向かないであろうミニサイズの小さな壺のようなガラス瓶達は、ミニチュアもの好きな日本人の心を捉えて離さないのでしょうね。形状の違いはあるもののいずれも高さが7センチ程度の小品を集めたのはコレクターの趣味にあったものだからでしょうか??

私自身は、二枚のガラス皿の間に金彩を施して熱で固めて二枚を接合したというちょっと白濁した金彩鉢が、部分的に光の加減で七色に光って美しさを倍加させているという印象が残りましたね。
以前、テレビで正倉院御物の白瑠璃碗のアノ正六角形の文様を再現するのがいかに難しいか(熱が冷めると同じ形を保てないとか)をやっていたのを見たことがありますが、正倉院御物のようにガラスだと一目ではわからないけれど、すこしひしゃげた形の同じような形のガラス碗の展示も心に残りましたねぇ。。

三部以降は一気に時代が近くなった12世紀以降のイスラム美術品が展示されています。紀元前の出土品に比べるとフツーに見えるのは何故なんでしょうかねぇ。。。その頃の世界の美術品のレベルから見ればそれほど驚きに値しないというマインドセットがあるからかしら?
いずれにしても、初めて見るものであっても、前半に比べると驚きも感動も減りはしましたが、額のマット部分が和紙の料紙のように金色の透かし柄のついたミニアチュール等には心を奪われましたよ。

それに。。トルコのハマームで使用する風呂場用下駄。螺鈿でできていて、いや、これ使いたかったなー。私の行ったハマームではビーチサンダルみたいなのだったもん。

324日(日)までやっています。
いつもと違って比較的空いた状態で鑑賞できますし、意外な発見が多いと思いますので、是非一度足を運んでみてはいかがでしょう?
出光美術館:中近東文化センター改修記念オリエントの美術

2013年2月26日火曜日

素直な人なのね・・・・相田みつをと仏像との対話



トーハクで円空展をやっていますが、ここでも円空仏が見られるというので、初めて、こちらの「相田みつを美術館」に足を踏み入れました。



随分と多くの人出にびっくり。。FBでみんながシェアするダイレクト出版の言葉とか、みんなこういう言葉に飢えてるのかしら?・・・新鮮な驚き、でも私はもともと、こういうのはNO THANKSなんですね。
だから、初めての入場。

相田さんという人は子供の心のように素直な人なんだろうな・・と並んだ言葉の脇のつぶやきのような感想にそんな事を感じる・・



その意味では一体限り展示されていた高山の正宗寺の薬師如来を造った円空さんに通ずるものを感じるけれど、そもそも文字が私には美しくは感じられず。。

言葉も、当たり前の言葉の連続。。。考える余地がない。彼の感想には、うなづけるけど、ありがたく拝む感じにはなれないわけですね。世の中の人気からいうと、申し訳ありませんが。

やっぱりごめんなさい、だわ。

同じアイダならセンセーショナルなアイダさんの方が色々想像を繰り広げ、考えることができて私としては刺激になるんだけど・・・

それは人ぞれぞれ。。


円空の薬師如来は地元の子供たちが寺から持ち出し川遊び等で使ったとか・・お人形さん替わりなんでしょうねー。傷だらけだというけれど、傷なのか、彫り跡なのかもうわからないくらいな円空さんの彫刻ですからねー。

でもそんな使い方もよしよし、と言いながら、また違う仏様を彫る円空さんの姿と、色々な人の道しるべにその言葉がなっている相田さんとはここでもつながっているのかもねぇ。。


2013年2月13日水曜日

【訂正あり】 やっぱり、夕日だと思ったの。。。私は・・・奇跡のクラークコレクションのブロガー内覧会での質問に答えてみます♪

日本人が苦手なLが三個もはいっているから(?)日本語でクラコレと省略するのは
まだよいとしても、何故にガイジン(と思しぎ女性)に「くら~(ク)、こ~れ!」
(Claaaaar(k) coooolle?)と言わせて宣伝するのかい!と突っ込みを入れたくなる
三菱地所のクラークコレクション展の宣伝を聞くたびに、「ヘンチクリンな英語を使うなんて。
。ったく、困ったもんだ」と思っていたわけですよ。

ま、それだけで、宣伝効果はあった・・ともいえる訳ですがね。

それはともかく、青い日記帳でおなじみ中村さんのブログ情報を見逃していた私でしたが
美術愛好仲間とのプチ新年会で、内覧会情報をゲット!早速申し込みをさせて頂き、
いつもの籤運を発揮して(?)3倍とも噂される倍率をものともせず(苦笑)、当選させて頂いた
ので、、伺ってきましたー。(ホントハソレホド印象派ラブデハナインデスケドネ。。)

展覧会そのものは三菱一号館美術館であるわけですが、解説の会は、その突っ込みどころ
満載の地所さんが展開しているMarunouchi Cafe倶楽部21号館@新東京ビル(一号館美術館の向かい)という会員制クラブで開催されました。


18時から開催だったので、ちょいと遅れて行ったので、冒頭部分は聞き逃しちゃったけれど
阿佐美学芸員のお話の印象に残ったところは・・・

1)クラークコレクションがマサシューセッツ州西部のバークシャー地方ウィリアムズタウンにあって、ボストンからもNYからも遠いので、なかなか行ったことがある人は少ないであろうこと(タシカニ。)

2)よって、こちらのコレクションを日本に居ながらにして鑑賞できる(シカモニホンジンダイスキナ印象派ダモンネー)機会は貴重で、しかも73点もやってきたこと。でも、巡回展の途中で、ベルト・モリソとポール・ゴーギャン作品の2点が状態がよくないことが判明して、来ることが不能になってしまったこと。ついでながら、一号館美術館が持っているロートレックのポスターの油絵版も貸し出しをお願いしたけれど、断わられてしまったこと。(巡回展トハイエ73点モカリレタダケデモスゴイトオモイマスガ。。。。残念ソウニ語ラレル阿佐美サンノ絵ニ対スル情熱ガスバラシイ)


3)ルノワールを中心として、コロー、ミレー、ドガ、モネなどの印象派を代表するそれらの73点は19世紀の美術史が時系列的に順を追って判るような展示となっている事。

4)コレクションはスターリング・クラークが恋に落ちたコメディフランセーズの女優フランシーヌと結婚して欧米で収集した作品で質の高い絵の数々であること。また、スターリングは大変な馬好きで、軍役を退いた後も中国を馬で廻ったり、ノルマンディーとヴァージニアでサラブレッドを育成する広大な牧場を持っていたそうで。(マ、巨万ノ富ヲモテアマス程の資産家デショウカラ、牧場クライハ持ッテマスヨネ)その、馬好きの片鱗が現れたドガの小品に見られる(ト話サレル阿佐美サン、興奮ギミ)そうな。

右側の小品がドガの≪レースの前》

5)(コレハホームページノ作品紹介ニモ解説サレテタケド)ルノワール「劇場の桟敷席」は、依頼主に受け取りを拒否されたエピソードがあること、赤い緞帳で塗りこまれていた男性の姿が見えるとか、見えないとか。(チナミニ阿佐美サンハミエナイトイウノ。正直ナ人ダナァ。。)
サァ見えるかな?

6)ルノワールのオオトリはアルジェリアの服装をした白人の少女。当時の総督のお嬢さんの名前フルーリー嬢がついているけれど、実在の人物ではなかった、というコネタ。

7)スターリングは白い花の絵がほしくて欲しくて、ずーっと画商に頼んでようやく手に入れたのがルノワールの「芍薬」。

8)ジェロームの「蛇使い」に描かれた壁はイスタンブールのトプカプ宮殿のスタイルだけど、床のデザインや裸の少年の蛇使い等、実際にはあり得ない光景を描いている。


9)ジェームス・ティソの「菊」。ティソはイギリスかぶれで、名前も英国人風にジェームスに変えているが、絵の方は当時万博で来ていた殿様(徳川の?)によりブームになった日本の影響があるとか。


そして・・・
10)モネの「エトルタの断崖」。モネはルーアンの大聖堂や積み藁など、ひとつのモチーフを時間を変えて、光の変化を捉えている。これも写真で見るよりずっと、ピンクがかった光に包まれているので夕方とも取れるが、阿佐美さんは朝の光だと思ったので、クラーク美術館の人に聞いてみたが、わからないと言われた。さて皆さんはどちらに感じますか?

タイトルに使わせていただいたのは、この質問の答えです。私なりの。
おっしゃるようにピンクがかった光の反映自体からしてもやはり夕方の印象が強いように思いました。ブルターニュは行ったことがないので、ちょっと自信ないけど、その後のフォービズム(私は実は印象派よりフォーブの人たちの絵の方が好き。。。汗)の画家達が描いていたサントロペとかで光を確認したことがあるんです。あぁいうふうにピンクに見えるかなぁーとかね。
で、その時感じたのは朝の光はもっとまぶしい感じになるんですよねぇ。。だから、この断崖のような名残惜しさがないんじゃないかなぁ。。と。
それでも決定的な自信はないので、画像検索して実際の写真と比べて見ました。地形とも付き合わせると、海岸線に向かって左が海の構図の位置は左側が東のようですね。
(・・・・と、最初書いたんだけど、手前が南だから突き出たほうは西ですねぇ)

海岸線から突き出た腕のような岩と海で覆われた奇岩の上部の方に光があたって、その光の反映が海のピンクにつながっていることを考えると、やはり西日が当たっている、と考えるのが正解な気がします。(阿佐美サン ゴメンナサイ。)(・・・というわけで、突き出た奇岩側が西なら。。逆ですよね。。ってことは???朝日??)

もっとも、この絵にはすがすがしさがあるから、朝の光だと解釈されたとしても、絵は人の捉えかた次第ということもありですから、クラーク美術館の人の「わからない」が正解なのかもしれないけれど。。(笑) 

さて、当日遅れて行ったため、ツイッターのハッシュタグもわかんないし、その場でつぶやくことはせず。家に帰って、感想かきましょって思っていたら、なんとメモをちょこちょこ書いていた出品目録をどこかに落としちゃった、んですーー。。涙

なので、結局当日のつぶやきとしては
これっきり↓
時発信できなかったし、どこかでメモ書いた作品一覧の紙無くしちゃったのだけど、内覧会で気に入ったのは①ルノワール《シャクヤク》②ステヴァンス《公爵夫人(青いドレス)》 ③マネ《花瓶のモスローズ》 いや、本当は印象派さほど好きじゃないのに、後からシミジミいいなと思う #クラコレ

ごめんなさいっ
でも、その紙をゲットするためというか。。もう一度今度は写真を撮ったりして集中できなかった分、
絵に入り込むため、翌日の昼休みに再訪。これも、内覧会の時に頂戴した招待券があってこその芸当。助かりました。本当にありがとうございます。


つぶやいたように、内覧会で一番印象的だったと思ったのは≪芍薬≫。

画面構成がね、いいの。
つまり、この時代に、あそこまで花瓶と花にズームしちゃって、額の中に納まらない感じで描いた静物画ってあんまりないんじゃないか?と思うくらい(違ってるかもだけど)斬新な構図だと思うし、色鮮やかだし。。。ダイナミックで強烈な印象。隣にベルト・モリゾの花瓶に入った花の絵があるけど、この芍薬のせいで、ぼけた絵のように見えたのはいかにも残念。単品だけならきっと、そんなこともなかっただろうに。。

一方、三番目に挙げたマネの≪花瓶のモスローズ≫はそれに比べるとずーーっと、小品だし、平面的なマネらしい背景のグレー(もマネらしい)のちょっと上の余白がすくない感じの場所から三角錐形にピンクの花が配された花瓶と、床面に置かれた一輪のバラ。花瓶の胴体の部分が水の屈曲した感じで、立体感が強くでていてフシギなアンビバレントな雰囲気を醸し出している。
同じ部屋の違う面に飾ってあるからかもしれないけれど、こちらは芍薬には負けていない感じです。


一点撮りはできないので、なかなかお伝えできませんが、やはり、ここは、実際に見て感じてもらうのが一番。


その実際に見て・・という中に二番目に挙げたステヴァンスの青いドレスをきた公爵夫人の小品があります。暖炉の上にかかっているこの作品、良く見れば、フランドル絵画に登場してきそうな、海外から(と思しき・・・その理由は彼女の後ろの和風?な屏風が示している。。という絵解きではないかと・・・)送られてきた手紙を丁寧に封を開けるのももどかしく開けて読んだ後の放心状態。。といった風情であるのですが、絵の中の物語より、一瞬に訴えかけてくる濃いブルーのドレス、それそのものが非常にアイキャッチーな感じなんです。

その脇の壁にかかっている同じ画家の≪思い出と後悔≫と比較すると塗り方や大きさ、女性の表情、そのいずれもが、正反対のイメージで、この二枚を手に入れるときにクラーク夫妻が何を思って選んだのかなぁーーー、と思いを寄せることができるのも一興です。
この他、いろいろなfindingsがありました。

帆船ばかり三枚かかっている部屋には、一面にモネとブーダンが並んでいますけど、ブーダンの作品は、これから嵐がやってくる予想の中慌てて港に戻ろうとする船が描かれている(・・と思われる)のですが、風雲急に掻き曇って波頭が乱れている激しい動きがその絵の中から伝わってきます。
一方のモネは、その後の彼の活躍からすれば、極めて平板というか動きの少ない、色も暗いんですよね。1866-67年頃というので、初めてサロンに作品を出した直後くらい、まだモネらしさが感じられず、ここは師匠であるブーダンに圧倒的な軍配が上がるなぁ。。。
左がブーダン、右がモネ


でも、その後に続く部屋に架かっているモネの作品は、ぐんと明るく印象派の王道な感じで、見飽きないですね。そして、ルノワールも。。(アレ?)



そういえば、ブリジストンの新所蔵となっているピアノを弾く若い男の絵のせいで、頭の中にイメージが固まってしまったカイユボットですが、とてもステキな≪アルジャントィユのセーヌ川≫の絵に出合えました。これも構図が三角でいいなぁ。。


右の絵がカイユボット

とか、とか、とか。

一枚一枚解説したくなるくらい、二度の鑑賞で、色々な発見があったわけです。
冒頭から申し述べておりますとおり、私はルノワールの大ファンでも印象派の大ファンでもないんですけどねぇ。。印象派と呼ばれる絵画群の中でも、しみじみと良さがしみこんでくるような絵を集められたのだと思うと、これが日本で拝見できるその「奇跡」をかみ締めることができるのではないかしら。

いやいや、ありがとうございました。

5月迄やってます。

「奇跡のクラーク・コレクション」----ルノワールとフランス絵画の傑作
2013年2月9日(土)-5月26日(日)
三菱一号館美術館


PS。私は男の人見えた・・・と思います。肩も左手も。

2013年2月11日月曜日

華麗なる伝来と超絶の修復技術、そして広い心・・・「茶道具の美ー岩崎父子二代のコレクション」静嘉堂文庫美術館

平成20年以来ですから、比較的短いインタバルで静嘉堂文庫が誇る国宝ー曜変天目茶碗の美しい虹色に輝く斑文美に会うことができるというので、岡本まで行ってきました。
ココはクルマが止められるから私的には便利なの。
ま、環八の混雑を考えて早く出なくてはならないけど。

最近の、というのか、静嘉堂文庫創設120周年記念・美術館開館20周年記念の「受け継がれる東洋の至宝」シリーズだからなのか、とにかく、この東洋の至宝シリーズ3回について、カラー8ページの豪華ミニ冊子を渡してくれるので、とてもありがたいのです。
今までは簡素な出品リストが一枚切れだったわけですから、かなりゴージャス。


右側の黄色い紙は平成20年のときの作品リスト 

特に、前回の『茶碗の美』で初めてお目にかかって感動した(野々村)仁清の「数茶入18口揃」については静嘉堂が過去に出版した図録や本の中に掲載されていなかっただけに、今回銘が入った写真がこの8ページのミニ冊子に紹介されていて、個人的には嬉しかったですねぇ。



勿論ホンモノに再び会うことができて嬉しい限りです。仁清はもともと好きな作家ではありますけれど、この数茶入はひとつひとつの形といい、釉薬の生み出す柄など個性がきわだっており、いつまでも見飽きないです。実際はなかなか長居できないので、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去ることになるわけですが。。

さて、茶入れといえば、今回の見どころのひとつとして、静嘉堂文庫を創始した岩彌之助太郎の弟)が会社に4百円を前借して【*】 手に入れたというダケではなく、それが兄の太郎(三菱の創始者ですね、竜馬伝で香川照之=今の市川中車が演じてましたね。)に見つかったが為、本家預かりとなったという「付藻(つくも)茄子」「松本茄子(紹鴎茄子)」という二つの茶入れが展示されていました。
【*】今回の展示ではこの金額の解説はありませんが、静嘉堂の過去の図録に出ています。


明治9年の4百円といったら、色々な計算方法があるみたいだけど40-50万円くらい??。。茶入れの価値を考えると意外に安い!

というのも、この二つの茶入れはすごい来歴を持っているからなんですね。
前者は足利将軍家(義満ー義政)の手から始まり、山名礼部豊重⇒伊佐宋雲⇒朝倉教影(宋滴)⇒その後が急に京の小袖屋⇒越前小袖屋⇒京袋屋という民間に渡った後松永久秀が⇒織田信長に献上、でも信長と共にあって、本能寺の変で一度罹災⇒豊臣秀吉⇒有馬則頼の手を経て⇒豊臣秀頼・・・大阪夏の陣で燃え上がった大阪城と共に罹災、ここで徳川家康の命によって、罹災したこの茶入れの探索を藤重藤元・藤重の親子に命じたそうで、二度目の探索で見つかったと。灰の中から9つの茶いれのかけらが見つかったそうで、それを丹念に塗りで修復したというのだから、凄い!


ねっ? 両方とも接いであるのがX線写真でわかりますよね。

しかもこのX線写真では接いだ後がわかるけど、現物はまるで釉薬のような光を保っているわけですね、本当は漆なわけですが。足利将軍家から信長ー秀吉ー家康の元にあったと言う華麗な遍歴も凄いけれど、今回の展示でも「超絶の修復技術」と表現されるほどの素晴らしい修復ぶりも凄いですよね。
そして、更に凄いなと思うのは、その修復振りを気にいった家康がしたこと。あれだけ灰の中から探索させたのに、自分の手元におかずに、もう一点の華麗な来歴を持つ松本茄子と共にこの付藻茄子をこの修復した親子にそれぞれ恩賞として与えたという事。
夏の陣で捉えた秀頼の子を見つけ出して処刑するばかりか、信長に命ぜられて実子すら切腹させるほどの冷徹さもあるけど、これだけ苦労して探した茶入を恩賞として分け与えるほどの広い心もあるんだなぁ、、と妙に感心。

あっ、その後の遍歴は、付藻茄子も松本茄子(山名氏⇒松本珠報⇒天王寺屋宗伯(引拙)⇒武野紹鴎⇒武野宋瓦相続を今井宗久が預かり之織田信長に献上、付藻茄子と以降同じ)も同様に藤重家から更に今村長賀を通じ岩崎家⇒静嘉堂に落ち着いたというわけですね。日本の名茶器・茶道具はこればかりではなく華麗な遍歴のものが多いけれど、この二つの茶入れの過酷で華麗な運命に思いを馳せることができてよかったなぁ。。

勿論、今回の最大の珠玉である、曜変天目(国宝)そして、油滴天目(重文)、いずれもたっぷり堪能しましたよ。
何故か、この二つ、他より人垣がなかったので、じっくり見られました。
特に油滴は元の安宅コレクションにあった大阪東洋陶磁美術館の持つ国宝の油滴天目茶碗より大振りだし、油滴の大きさも大きいけど、下からライトが当てられていたので、胴と腰といわれている外側の部分が美しく角度によって虹色に光る大振りの油滴斑がとてもキレイだし、高台脇に溜まった黒釉がこれもとても美しいことを再確認しました。

もうひとつ、胴部分の美しいお茶碗、こちらは唐物ではなく、その姿に倣って瀬戸の美濃窯で生産されたといわれている「瀬戸天目 銘:埋火(うずみび)」。国宝でも重文でもないけれど、小堀遠州の目を捉えたというだけあって、その美しい虹色に光る銀色の帯の景色が素晴らしいの。
別の図録からその部分を撮ってみたけど、やっぱりホンモノには適わない。

もちろん、その他、以前も見たけれど、ステキな茶道具がいっぱい。
本当に目の保養になりますねぇ。。

2013年2月6日水曜日

期待して当たり前なんだし・・・by イチハラヒロコ




そう言われても期待してなかったわけですよ。

何を?

ミッドタウンにこんな文字があふれていたことを。


ドリョクハムクワレル。

芸術を日常にする。

チャンスは一度のお約束。

つきせぬ想い。

Photo: 今日の天候により、時間ができたので、今日からスタートしたサントリー美術館の展覧会みにいきましょって、出かけてから、水曜日は六時閉館だったことに気づいた私。全く呆けてるなぁ。。。でも、ミッドタウン内のあちこちで、イチハラヒロコの「期待して当たり前なんだし」っていう、ラブにまつわることばの展覧会に遭遇。なかなか、インパクトがあって、面白かった。でも、入れ替えるみせがおおいからこんなことが可能。。。って考えると、ミッドタウンも結構苦戦してるって事よねぇ。。。


なかなか含蓄がある言葉を、大きなゴシック体の文字で、改装される店の囲いに書き込んであるわけです。


だから、何?

と言わずに、その言葉の世界に浸ってみるのは心地よいですよ。無料ですし、お時間あれば是非。


http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/2013/6863.html