2013年2月28日木曜日

オリエント急行殺人事件と出光美術館のフシギなつながり? 出光美術館



人類の黎明となる文化文明の起源の地、中東。発掘をされることで有名な学者殿は知っていても、大英博物館やルーブル、メトロポリタンといった海外の美術館博物館のように大々的なコーナーのあるところはないよね、って思ってましたよ。

そもそも、エジプト美術だけでも、先ずは英国がやってきてめぼしいミイラをかき集め、ナポレオンの遠征に伴って発掘されたものがルーブルに行き、相当カスカスになったところで、最後にアメリカが金の力に物言わせて調査団を送り込んで発掘しきれいさっぱりもって行った。。。んじゃないか?と思うほどの質量ですからね、一般公開してくれる範囲だけでいうと。

カイロのエジプト考古学博物館なんかツタンカーメンの黄金のマスクとラムセス二世のミイラ以外は数が多いといっても、見せ方の面白くなさのせいも手伝って、あんまり印象に残らない(でも展示の部屋数は多かったー。疲。)

それに引き替え、遠く離れたニッポンでは松岡美術館とかの隅っこのほうににちょこっととか、あるけど、日本にはさほど大きなコレクションを持っているところはないでしょうねー、と思っていました。量という意味では正解、でも質という意味ではなかなかのコレクションを持っているところがあったんですねー。それが出光。

出光と中近東美術との関係は、この展覧会のきっかけとなった中近東文化センターhttp://www.meccj.or.jp/Pages/main_frame.html
に触れられていますが、何はともあれ、とにかく紀元前の出土品は出色でとても愛らしいハートの顔をした女性の土偶やトナカイを連想させるような赤鹿の形状をした水注(紀元前6-10世紀頃!!)、朱鷺(アフリカクロトキ)のミイラや、その形状を模した置き物等、その品物が紀元前10世紀である等とのラベルを見る前に、「美しい!」と感嘆できる作品が多いのです。勿論ラベルみて、その古さに比した高い技術に更にびっくりする、という仕掛けです

唯一、つっこみを入れたくなっちゃったのは、一番最初に展示されていた山羊疾走の土器。うーーん。二重丸を書き連ねたような文様は文様としては美しいけれど、これを山羊の疾走というには無理があるんじゃね?しかも紀元前5世紀。時代が古いからといって、デザインや技術が稚拙だとは限らないという事は、すぐ近くにある、山羊のデザイン(これは見るからに山羊とわかるデザイン性の高い器を見ると思う事です。この山羊の下にはボーリングのストライクマークのような文様と縦線の文様が連続していて、現在に通じる優れたデザインですが、確かに100年程度違うけど、こちらの紀元前4世紀でこれだけはっきりとした「絵」が描かれているのに、何故何故?

そうそう、サイトにも載っている金製高坏もそのデザインが美しくつっこみいれた土器のデザインに似た(似て非なるなんだが)イメージを与えてくれるけど、それも紀元前10-6世紀だということで。。よくこれだけの保存状態と質の高いものが手に入ったなぁと感心してしまいます。

面白かったのは給与の支払い記録。支払は基本的に現物で通常大麦だけど、この記録ではビールとパンの記載があるんですって。支払先も代官、兵士、伝令、儀式の歌い手、献酌官等、当時の官吏の仕事内容が想像できる・・・って、研究者もすごいですよねぇ。。

こんなマメ知識トピックスが展示されているわけですが、その中にタイトルにしたクリスティーの事が書かれていたわけです

アガサ・クリスティーは中近東に一人旅して、そこで知り合ったマックス・マロワンさんという考古学者と再婚しているのですが(再婚とか一人旅のことは書いてありませんでした、念のため)、その考古学者仲間の人たちによる発掘されたモノとの関係があるという訳ですね。仲間の関係者の中にはアラビアのロレンスも登場するし、好きな人にはたまらない食いつき話題です。はい。

さて、第二部は吹きガラスの技術が向上した頃からのローマ時代の作品が並びます。実用には向かないであろうミニサイズの小さな壺のようなガラス瓶達は、ミニチュアもの好きな日本人の心を捉えて離さないのでしょうね。形状の違いはあるもののいずれも高さが7センチ程度の小品を集めたのはコレクターの趣味にあったものだからでしょうか??

私自身は、二枚のガラス皿の間に金彩を施して熱で固めて二枚を接合したというちょっと白濁した金彩鉢が、部分的に光の加減で七色に光って美しさを倍加させているという印象が残りましたね。
以前、テレビで正倉院御物の白瑠璃碗のアノ正六角形の文様を再現するのがいかに難しいか(熱が冷めると同じ形を保てないとか)をやっていたのを見たことがありますが、正倉院御物のようにガラスだと一目ではわからないけれど、すこしひしゃげた形の同じような形のガラス碗の展示も心に残りましたねぇ。。

三部以降は一気に時代が近くなった12世紀以降のイスラム美術品が展示されています。紀元前の出土品に比べるとフツーに見えるのは何故なんでしょうかねぇ。。。その頃の世界の美術品のレベルから見ればそれほど驚きに値しないというマインドセットがあるからかしら?
いずれにしても、初めて見るものであっても、前半に比べると驚きも感動も減りはしましたが、額のマット部分が和紙の料紙のように金色の透かし柄のついたミニアチュール等には心を奪われましたよ。

それに。。トルコのハマームで使用する風呂場用下駄。螺鈿でできていて、いや、これ使いたかったなー。私の行ったハマームではビーチサンダルみたいなのだったもん。

324日(日)までやっています。
いつもと違って比較的空いた状態で鑑賞できますし、意外な発見が多いと思いますので、是非一度足を運んでみてはいかがでしょう?
出光美術館:中近東文化センター改修記念オリエントの美術

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