2013年5月30日木曜日

伝統工芸は日本のものづくりの原点である----開館10周年記念特別展ー幸之助と伝統工芸@パナソニック汐留ニュージアムのブロガーイベントに行ってきました。

そう、ルオーの作品で有名なパナソニック汐留ニュージアムは、その名を「松下電器産業」といっていた2004年に開館したんですね。

今や社名には松下の名前は無くなってしまったけれど、企業の名前を冠した美術館らしく、その創業者である松下幸之助と彼が成功してからの文化的活動について10年目にして初めて企画されたこの展覧会、



始まった頃には持ち主からまだ出品を許されていなかった《萬暦赤絵方尊式花瓶》が初公開されるに至った中期の初日に、ブロガーイベントが開催され、行ってまいりました。


とはいえ、開始時間が私にとっては近くなければ、絶対ムリーな(早い)時間、18:00からだったなんで、相当走って、おつむガクガク(イツモ?)、お手手ぶるぶるな状態で駆け込んだので、結構見落としがあることに今気付いて、また行かんとあかんばい。。。とおもっちょリます。速報ベースで書きますのでその点ご容赦を。

また、このイベントでは会場内の雰囲気写真を特定の場所からのみ撮影を許可されていましたので、会場内の写真を撮影しています。普段は場内の撮影は禁止ですので、ご注意ください。
個別の写真は全てちらし等の紙媒体を撮影したものです。

解説してくださったのは社員で学芸員(イイナ、ソウイウステータス。。)の岩井さん。

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松下幸之助に限らず、もともとは風雅な家に育ってはいないけれど、自身の力で成功した企業家という人たちは、余裕が出てくる頃に、なにやら収集を始める傾向があるんでしょうかねぇ。江戸ー明治の財閥にのし上がった三井・住友・三菱(岩崎家)、は勿論、今美術館に名前が冠してあるところは大抵、まとまったお金を使ってそれなりのコレクションを築き上げていますよね。
で、大抵、そのきっかけは茶の湯だったりするわけで、松下幸之助も入り口のところは一緒。

近畿車輛(岩井さんは近鉄車両とおっしゃっていましたが、田中社長のお名前が出ていたので、正確には近畿車輛の前身の田中車輌ではないかと思われる。本質ではありませんが。)の田中社長にお茶会の正客に招かれ、何も知らずに引き受けてしまった、ところから、その一歩が踏み出されたそうな。
お茶をやっている人であれば、何の作法も知らずに正客を引き受けるなんていう大胆なことはできないけれど、やってみて恥を掻いた幸之助、そこで終るわけはありません。一年後には西宮に「光雲荘」をつくって茶席「光雲」の亭主を務めるに至ったとか。でも、幸之助とてたった一年ではそうそう巧くいくわけはないのを、そっと支えてくれた裏千家(十四世の)無限斎宗室(碩叟)さんの心配りに感激し茶の湯の道に邁進し、茶道具を集め始めた・・・・
と、ここまではのめりこみのスピードや深さは違うかもしれないにせよ、ありそうなお話ですよね。

でも、その後からがこの人の真骨頂。
華美なものは好まず、質素なものが好きというご本人は普通の収集家とは違う道を選んで行ったようです。
古いモノも集めていますが、戦後誰もが食べるのに一生懸命で、需要がなくなって、展示会すら開けない伝統工芸の業界(その範囲は茶にまつわる茶釜や陶芸にとどまらず、友禅染など)を支えるという活動に力を注ぐことになった、というわけです。結果として同時代の工芸家の作品が集まったという次第。

小学校途中で丁稚奉公に出され、関西電力(の前身)で勤める頃に電球のソケットを発明しそれが会社創業のきっかけとなったことは、あまりにも有名ですけれど、その発明し、モノを作るということが身に備わった彼だからこそ、美しい茶道具などに触れるにつけ、その伝統の技というものに魅了されていったに違いないのです。だから、支えたくなったんでしょうね。

だって、モノ作りには関係ない私たちにだって、日本の美しい伝統工芸品をこしらえるとなったら、相当の修練と技術が必要だということはわかっているのですから。

よって・・・ハッキリいって、今回展示されている品々も、収集家目線で見たら、ばらんばらん。。。というか、一貫性はあまり感じられません。特に支援していた工芸作家の作品群はね。

でもね、茶道具の方は、萩焼の人間国宝(無形重要文化財保持者)三輪休和(十代目休雪が隠居後の名前・・・コネタですが)の《萩茶碗》は胴の部分の白い釉薬-休雪白も美しいけど、見込みのひび割れもキレイ、だったり、愛用していたという大きな手ならすっぽり入りそうな小ぶりで、朱釉の美しい一入の《黒茶碗「閑談」》など、実用として使われたというだけあって、無駄のない良品が多いように思いました。
三輪休和《萩茶碗》 見込みの細かいひびが美しい

樂一入《黒茶碗 銘 閑談》 朱釉の景色が美しい
この大きさの感覚は実際に見ないとなかなか比較がしにくいけれど、息子の宋入の同じ《黒茶碗「毛衣」》と光沢や大きさが違うことを確認するのも面白いかな。

また、特にそれと知らずにひとつのガラスケースの中にはいきなり目を惹かれましたねぇ。というのは二枚の角皿がなんともいえず趣味がいいの・・・

・・・と、思ったら北大路魯山人だった。
《織部鉄絵鳥文四方皿》は、はっきりいって、焼き温度は失敗作かもしれないほど、織部らしい深い緑ではなくエメラルド色(解説によれば、釉の銅があまり表に出ずに、発色したそうです)だし、下の方も色がまざちゃっているんだけど、なんか、それがいとおしい感じ。
これが備前焼餅
隣に飾られていた《備前焼餅 平鉢》も牡丹餅と呼ばれる窯変による濃いオレンジ茶の丸紋が趣のある景色を作っていて、この大きさといい、ひと目で引き込まれましたし、隣にあった藤原啓の《備前徳利》も、現代の作家なのに、遜色なく並んでいる。
奥のガラスケースに二枚の四方皿と徳利が見えますよね。


第二章の工芸品はひとつひとつ見ていくと結構良いものが多いのですけど、私が目を奪われたのは黒田辰秋氏の《欅拭漆飾棚》。透明感のある釉薬でも塗ったのではないかと思うほどつやつや、でも、木目が美しく浮き上がるように漆を塗られた欅の美しい、そしてシンプルなデザインの飾り棚です。
岩井さんがちょっとしたエピソードを紹介してくれました。実は今回お孫さんから、人間国宝の作業過程を写したビデオがあると言われたそうで、見てみると、作業されていたのはまさにこの《欅拭漆飾棚》!正面部分の木目が決め手となってわかったそうですが、お互い、ビデオがあるお孫さんはビデオの中の作品がどこにあるか知らず、美術館側はそんなビデオがあることを知らず・・・今回の企画で初めて、この二つの関係がつまびらかになったということです。
それともうひとつ、真ん中の引き戸部分だけを開けると、奥のものがとれないということで、途中から観音開きになる、というカラクリもご紹介いただきました。
残念ながら、この飾りだなは写真を撮れるエリアからは遠いし、パンフレットにもなかったし。。。。
やっぱりこの魅力は会場で!(ト、コッソリ?イヤドウドウト宣伝モワスレマセン、私)

また奥まったエリアに展示されていた友禅の大胆な柄も結構気に入ったなー。息子さんの方ね、森口邦彦さん。

いや、こうやって解説し始めると結構キリがなくなるなぁ。

ま、後はもう一度行って確認することにするけど、会場外でやっていたビデオで森口邦彦さんがお話されていたように、幸之助は同じモノツクリ人としての仲間意識があってこその工芸家支援であり、自分のところ(パナソニック)もこれら工芸品のように精緻・正確でないといけないとの自戒を込めての収集だったのだということが改めてわかるような展示でした。





パナソニックさん頑張って!


開館10周年記念特別展ー幸之助と伝統工芸
パナソニック汐留ニュージアム
2013年4月13日(土)~8月25日(日)
(前期終了 中期 5月30日ー7月9日、後期7月11日ー8月25日)





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