2013年5月14日火曜日

【終了後感想文】東京ステーションギャラリー再開記念 生誕120年 木村荘八展ーーー優しさとか温かみとか。


はっきり言って、東京ステーションギャラリーで木村荘八をやっていると聞いても、チラシ見て、最初は油絵描いていたんだぁー、あっ、違った、《濹東綺譚》の挿絵の人だった・・・・(いや、完璧、写真家の木村伊兵衛と取り違えてたし。。。滝汗)、ってなレベルだったわけですよ。近美で何枚か、《濹東綺譚》の挿絵画を見たことがあった程度の記憶。

見に行った人の呟きを見て、会期わずかな『生誕120年 木村荘八』展を昼休みに見に行きました。


http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/kimura/kousei.html

丸の内北口の自動ドアを入ると係の人が二台並んだ自動販売機に誘導してくれます。でも年間パスポート4000円買ってもよかったなー。。(・・・と後で反省)
券売機からぺろんと出てきた大きなチケットで入るのかと思いきや、エレベーター前にいるお姉さんにそのチケットを渡すと、細長い絵入りのチケットと引き換えしてくれましたが、これって必要?紙の無駄になるよね・・・

それは、ともかく・・・
エレベーターに乗り込み、先ずは三階に。順路は壁に書いてあるのだけれど、エレベーターの右後ろ手にも会場が広がっているし、駅舎の壁の形や、中の仕切りのせいもあって、どうめぐるのか、ちょっと戸惑う構造です。

それも、ともかく・・・
この人は下町の牛鍋やの妾腹で八男だそうですけれど、なかなか裕福な環境で育ったのでしょうかねぇ。その色のトーンが暗いものであっても、全体的に温か味とか、優しそうな人柄が絵から伝わってきます。
こういう風に感じる事はめったにないんだけど、不思議な感覚に最初から包まれました。解説によれば、父親の牛鍋やの帳場に立ちながらも、文化芸術に深い理解のある長兄の影響もあって、絵の勉強ができたようですけど、留学をしたわけでもなく、絵画学校の帰りに丸善で図版等を買ったりして、それで勉強したというんですね。それにしては、器用にマティス風であったり、ゴッホ風(にしては絵具の重ね方は少ないけれど)に見えるような絵の描き方をしている。育ててくれた祖母に対するあたたかい眼差しを感じるような祖母の肖像(何枚かありました)や自画像を見ていると、他の人にない、やわらかさを感じます。日比谷公園を描いた小さな油絵も、マティスとかの影響だとはいえ、きれいな明るい色でほっこりしますね。

年表には小唄学校の校長にもなっていたりして、下町の粋なお大尽な感じなのかなぁ、身代つぶしてしまった父や自殺に追い込まれた兄の存在もあるというのに何か悲惨さとか悲壮さがないし、中原淳一ばりのお目目パッチリな奥さんがブルーの壺を持った肖像画《壺を持つ女》にしても、奥さんへの愛情と優しさを感じます。
気に入ったのは、写真はないのだけれど、《歌妓支度》。100号かそれ以上の画面(ちょうど《牛鍋屋の帳場》と同じ大きさ)の中央に立つ歌妓さんの縞の着物と〆ようとしている黒地に○の幾何学模様の帯がとても粋。こういう場面を切り取れるのは、ロートレックではないけれど、こういう場に出入りしているような人でないとね。
この絵がかかっている部屋にはちらしにも使われている細長い画面に赤い柱やちょうちんが目立つ浅草寺の絵《浅草寺の春》や、自分が帳場で働いていた牛鍋屋の絵《牛鍋屋の帳場》そして《新宿駅の風景》がかかっていて、前半の華です。ところで、浅草寺の大提灯ですが、今は雷門という文字だったように思うのだけど、この画面では「橋」という字だなぁ・・

今回改装後初めてのステーションギャラリーでしたが、二階に下りて行く階段部分にはアールデコ調のシャンデリアや、細工はあまりないけれど、きれいな色のスデンドグラス(丸窓用)、東京駅創建当時の煉瓦の隙間に挟まった木材は黒焦げ(戦争で焼けたのでしょうか・・)だったりと、目が回るような感じではあるけれど、足が悪いとかでない限りは、一度は階段を降りる価値があります。(三菱一号館美術館の階段よりはゆったりしているし。。。)

二階に下りると永井荷風の《濹東綺譚》の全挿絵なのかしら?今まで見たことのない場面とかが一斉に並んでいて壮観です。でもホワイトで修正がしてあったりして、さながら漫画の原画を見る感じ。
更に晩年の東京繁盛記、師走風俗帖とシリーズものが並んでいて、一大retrospectiveであります。

後半には、フエザンの会を立ち上げ、仲よくしていた岸田劉生等の作品が展示されています。岸田劉生の代々木の崖の絵が大好きな私的には、ちょっと角度が違ったところから描るいたように思え《赤土と草》も魅力的だったけれど、劉生と最後まで行動を共にしていたという椿貞雄の《砂利の敷いてある道》が、同じ場面を描いているのかしら?と興味を惹かれました。いつかこの絵と劉生の絵が並んで展示される日を心待ちにしたい。並べると更に劉生の絵が際立ってしまうかもしれないけれど・・・
その絵の隣にあった横堀角次郎の《真夏の赤土坂道》はセザンヌばりのキュービズム的な印象を受けてなかなか面白かったなぁ。。

最後の章では《濹東綺譚》以来挿絵画家扱いされていたけれど、油絵画家の矜持として、家の中から毎日庭の絵を描いていたという事で、10枚以上の庭の風景の油絵がかかっていました。前半と比べると明るさがないのがちょいと気になりましたけどね。

思った以上に点数も多いし、期待が少なかっただけに、気に入った絵が見つかって嬉しくなってしまいました。年間パスポート買うかなぁー。

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