2013年6月26日水曜日

【終了後感想文】やきものに親しむⅩー日本人の愛した〈青〉の茶陶  古染付と祥瑞 @出光美術館

明日からなんちゃって外交なんで、行けるとしたらもう今日しかない!っちゅう事で、もう一度じっくり見てから書きたい三菱一号館の「浮世絵フローティングワールド」の内覧会レポ書きの時間を削って雨のそぼ降る昼休み、出光美術館に伺ってきましたー。
雨が降った平日の昼だけど、そこそこの賑わいです。人気高いですよねー。ここ。

展示は出光美術館が数多く所蔵している古染付から紹介がはじまります。展示品の解説ラベルには可愛い絵柄ーーこれは展示されている《古染付周茂叔文皿》の部分ですが、中国では有能な官僚として上り詰めた北宋の周頓頤(しゅうとんい)、通称は周茂叔のように、キッパリ引退したらこのように毎日釣り糸を垂れる生活をして過ごしたいという文人のあこがれとして彼の名前はこの蓮と釣り糸をたれるややとぼけた顔の老人の絵柄に象徴されているそうなんですね。
この右端にいる釣り糸をたれた周さんの絵が解説の紙一枚一枚に印刷されていました。色は青ね。

このお皿の口縁には「虫喰い」があって、それを取り込んで蓮の葉の虫喰いも表現しているんだ、と解釈するその「こころ」はいかにも日本の茶人の好むところだったんでしょうねぇーー。ふむふむ。

結構長い説明書きなんで、全部書き取らないまでも私が必死に書いてる脇で、スマホでパシャりとしてるお姉さんがいたんですよねー。出光っていつから写真オッケーになったの?なってないと思いますが。。。

そういう私も、知りたかったら、図録を買えばよいのですけど、欲しい情報がなかったし、内覧会なんかで写真だけで記録すると頭に入らないことも多いから、時間制限がある中、一生懸命メモをしていた私です。

その図録を買わない理由になった、説明が欲しかったモノ=安政二年「形物香合相撲」という番付のコピーが香合の並んだ真ん中にどーんと飾られていてこれがオモシロイ。
そもそも相撲の番付の読み方が全部わかっているわけではないけど東西を分ける真ん中の「柱」といわれる部分に「蒙御免(ごめんこうむる)」って書いてある部分に、「形物香合相撲」と書いてあって、あっ、そうそう、文字も相撲番付に特有の江戸文字の相撲字ではなくって、細めの特徴的字体。
その下には「直斎好名取川」とか「庸軒棕有梅」とか???な名前の〈行司〉が3名(名?)その下には〈頭取〉というのがまた3名(物?)。うんこれはなんとなくわかるぞ。「黄瀬戸根太」「伊賀伽藍」「志野宝珠」。
そして、更に「織部菊兜」「同(織部)青分銅」「仁青鷹」「乾山鑓梅」。。。。って書いてある。
頭取ってなんだろう??


説明がなかったので、検索してみたら出てきました。http://verdure.tyanoyu.net/katamonokougoubanzuke.html
ふむふむ

依然頭取の事は良くわからないけど、楽しいことには違いなく。。あっ、そだ。この番付の中に《古染付周茂叔文香合》を始め三作が入選(?)しているんですね。大関とかではなく、前頭何枚目なんか?という位置ですけど、少なくとも安政年間に「コレハ!」という香合を三作ももっていたら、広い展示室を、自分の美術館の古染付や祥瑞で埋め尽くすことができなくても特集したくなるよね。。
(イヤ実ハ、後半ハ屏風ガ立チ並ブトイウ状況。)


話が前後しますが、古染付というのは明時代(天啓年間(1621年―1627年))景徳鎮の民窯の中でも胎土や釉薬の材質であまり上質でない粗悪ともいえる雑器で、殆どが日本にあるそうです。
 形の悪いものも愛でるようなココロは茶人の粋ということですよね。

色絵のものは「天啓赤絵」と言われているそうです。幾何学文様や区画線を廃して自由に描かれ、古染付けの食器類には御所車や市女傘といった日本的柄があるものとか(デモナンカ日本ノ御所車トハ違ッタ感ジ)、水差しも日本の陶器に似せるために肉厚にしたりと、もともと日本向けに作られたものが殆どなんですね。でも古窯址が見つかっていないから、まだ判らないことがありそうですね。

確かに絵付けも下手くそだし、虫喰いがよいとはいえ、なんか、ガラクタちっくだわよねぇ。。。。

特別出品されていた石洞美術館の所蔵品、殆どが筍や茄子などの形をした向付で、その形の自由さには楽しい気持ちになったけど、絵付けは相変わらず揃ってなくてへたっぴなの。枇杷とか、扇とか。。ウサギとかヤギとかの顔も怖いし。。魚とか馬は可愛い。

《古染付葡萄棚文水差》
そんな中、さすがにパンフレットの写真に使われているだけあって、↑《古染付葡萄棚文水差》とか、双耳がお魚の作品《古染付高砂花生》はいいよね。


ん?この花生、どこかで見たような気が・・・・・。


《古染付高砂花生》 これが出光美術館の




















そうだ!トーハクのニュースレターだ。ってか、4月に常設で花生特集やってたときに、実物を見た記憶があるんだ!
タイトルも同じ、でもお魚の柄と人物の絵柄が違うね。こうやって、いくつも作って輸出されていたのかしらね。

《古染付高砂花生》こちらは東京国立博物館所蔵

 そういう楽しみは別として、でもやっぱり

と、こ、ろ、が。。。

第七章の祥瑞の展示(コチラ=祥瑞の解説プレートには↓のウサギが印刷されてましいた。。。)

にはいって、端正で美しいデザインが並び始めると、フシギな感覚に襲われることになります。

キレイすぎて、なんか面白みがないなー。瑠璃祥瑞なんか、ぎらんぎらんで、どうよって感じ。

ただ、パンフレットに出ている《祥瑞蜜柑水差》は面白かった。
写真は正面(なのかな?)に鴛鴦の絵が描かれているけど、この裏側は山水図という「片身代わり」(陶器の半分ずつが異なる調子に焼成されたもの。また、半分ずつに異なる色の釉(うわぐすり)をかけたもの。)という手法を使っていて、この手法は中国ではあり得ない手法なんだそうな。つまりは日本からの注文品ということがわかるという寸法。でも蓋裏には中国の陶工の意地が発揮されている文字と絵が描かれているそうで。。。色々その頃もあったのね・・・・

《祥端蜜柑水差》

まぁ、そういう訳で、私でもゆがんだ器の形や片身代わりなんかに面白みを感じるんだから、日本人に備わった美意識って、そんなところにあるのかもねぇ。。
とりあえず、せっかくメモしたので、祥瑞とは・・・明時代の崇禎(すうてい)年間(1628-44)に主に日本の茶人達からの発注によって作られた青花磁器で、染付銘のいくつかに「五良大甫(ごろうだいほ)呉祥瑞造(ごしょんずいぞう)」という名前の記載があることから名前がついたそうです。もともと景徳鎮の官製窯である御器廠の生産がストップした後も、技術が継承されて上質な胎土と青料を使った端正な器形と丁寧な文様が特徴なんだそうです。確かに色も鮮やかだし、緻密な柄。しかも器の全てを埋め尽くす感じのものが多いですね。ま、だから、息が詰まるという面があるんだけど。
勿論日本からの注文だから器の形には日本独特の「扇形」「沓形」「州浜」という桃山陶風のものが少なからずあるので、もっと、勉強していくと違った見え方がしてくるのかな・

いずれにしても今日の感想としては「古染付」に軍配を上げたい。


やきものに親しむⅩ
日本人の愛した〈青〉の茶陶
古染付と祥瑞
出光美術館 2013年5月25日(土)-6月30日(日) ---この展覧会は終了しています。

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